I smiled to conceal my lie

嘘を覆い隠すために笑った


「え、ジーン日本に行くの?」
「うん。調査でね。」
SPRに所属をしたジーンが、ある日荷物をまとめていた。小旅行くらいの荷物だったから気になって聞くと、どうやらSPRの調査で日本に行くらしい。
「ナルは?」
「ナルはいかないよ。僕とほかの調査員だけ」
「・・・・・・大丈夫なの?」
「え、」
「ジーン、おっちょこちょいな所があるから・・・・・・」
「大丈夫だって。」
「・・・・・・」
思わずその言葉に真顔になる。え、信用されてると思ったの?
「え、そんなに信用ないの?」
じいっとジーンの姿を見て、後方のソファの所にいたナルに声をかける。
「ねえナル。僕も一緒にいっちゃだめ?」
?」
「・・・・・・は正式なSPR会員じゃないだろう」
「でも実験には協力してるでしょう?調査の邪魔はしないから!」
ナルのいるソファの元まできて、そこに体を預ける。ナルの手元にある本には興味があるけれど、まずはこっち。
「ね?」
「・・・・・・なにか見たのか?」
「___なんも?でも日本でしょ?僕日本語話せるし、ちょっとは協力できるよ!ねぇナルぅ」



「うっわぁー!広い!」
「あまり遠くに行かないでよ?
「はぁい」
無事に調査も終了し、僕はジーンとともに道路を歩いていた。ほかの調査員は機材などの関係で先に帰路についており、観光をすこしだけ、というジーンの希望によって、僕たちは別行動することになった。無論、そのことは調査員のトップには説明ずみだ。
長い道路、道幅もあって、とっても先は長い。時々車が走るけれど、そこまでたくさん走っている場所ではなかった。車が欲しいなぁとちょっと思うけれど、免許が取れる年齢でもないのであきらめる。
「日本って、意外とのどかなんだね」
「場所によって違うらしいけどね。調査結果も英国じゃとれないものだったから、ナルも喜ぶよ」
「ナル、研究馬鹿になっちゃったねぇ」
おもい浮かべるのは、色々な研究資料とか、画像とかを見ているナルの姿。ナルはつい最近、飛び級をして大学生になった。最年少でSPR会員にもなって、現在は研究にいそしんでいる。ひどいときはずうっと研究所に引きこもって、家にも帰ってこない。
「あはは。でもも似たようなものじゃない?いつも一緒に本を読んでるだろう?」
「それとこれとは別!ナルは僕に甘いから。実験も、ナル専属になってからめっきり減ったし」
「あれ、僕は?」
「ジーンも僕に甘い!」
「じゃあ厳しくしようかなぁ?」
「ええぇー」
「冗談だよ」
一応ジーンも、SPR会員。けれど、研究対象でもあるから、そこまで積極的な研究はしていない。もっぱらナル専属だ。僕も同じ。会員ではないけれど、時々夢を見てはそれについて審議している。だいたい何もしなければそれ通りになってしまうけれど。ここ最近は、昔のことも夢見るようになってきた。ナルやジーンが行った調査地でなにが起きてるとか、過去になにが起きたとか、そういう夢も、みることがある。そういったことがあれば、必ず連絡するようにと言われている。
___守らないことも、あるけれど。
だいたい、そういう夢を見る場合、関係するのは身内だ。過去のジーンが車にひかれる事件のように。そして、在るところで介入すれば、それを防ぐことが出来るのも、検証済み。事前に話せば、聞いた本人はその悲劇を回避しようと無意識に動き、結果がずれ込むのもわかっていた。だから時々、夢を話さないこともある。僕だけが知っていれば、直前で、完璧に回避できることをしっているから。
「でもってば、なんで今回日本に来たいって言ったの?英国内だったらまだしも、日本だよ?」
「日本だからこそに決まってるじゃん。ナルとジーン、いっつも日本語で内緒話してるから、日本のことが知りたかったの」
「いつもしてるかなぁ?」
「してる!2人とも、内緒話ばっかり!」
「う、ごめんね?」
「だめですー。この怒りはアイスを買って貰わないと収まらない」
「あはは。それじゃあそこでアイスでも買おうか」
「やった!」
近くに見えるコンビニをジーンは指さした。日本は治安が良くて、色々な所に自動販売機とか、お店がある。便利な反面、英国とは全く違うのだと実感させられる。
「いこっか、
「うん。なに買って貰おうかなぁ」
そういって、2人で道路を渡る。無論、周囲は確認して。
見通しのいい道路。急激なカーブは見当たらない。だれもが気にかけるような場所でもない。
だからこそ、ジーンは、きっと油断していた。
「ジーン!」
「え?」
甲高い音と、滑る音。どん、という衝撃と、痛み。ガシャンと音がして、大本の発信源が動きを止める。
「____?」
発信源が緩やかに動き出して、僕たちを見向きもせず消えていく。周囲には発信源の破片と、赤と。
?しっかりして!!」
「___、じー、ん」
「すぐに電話を・・・・・・すぐ戻るから!」
ジーンが近くのコンビニに走り出す。それを赤い視界で見送る。近くに車は通っていない。ジーンがなんの怪我も無く駆けていく姿をみて、思わず笑った。大丈夫、ジーンは怪我をしていない。
ジーンはおっちょこちょいで、抜けている所がある。しっかりしている部分もあるけれど、ナルに比べたら全然。

本当は、ジーンがこの場所で事故に遭っていた。僕はこの場にいなかった。ジーンは1人でここにいて、車にひかれて、殺される。そんな夢をみた。だから、僕がその立場に成り代わった。そうすれば、ジーンは生きてられる。死ななくていい。
もしかしたら、ナルは気がついているかもしれない。出かける前の、ナルの眼がそう語っていた。次におきたらおそらく、怒られる。それはちょっと、いやだなぁ。
だから、少し、寝かしてください。

2017/09/01


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