黒子のバスケ

4


夢を見た。知らない俺が、知らない場所でバスケをしている夢。中学生くらいかそこらで、無邪気だった。今の不良っぷりからは想像もできないくらいに無邪気で、笑っていた。ボールを片手に持ち、思いっきり飛んだ俺は、そのままゴールにボールを押し込んだ。大きくなる歓声に笑みがこぼれ、よってきた人とハイタッチを交わしていた。それに誰かが声をかけてきて、俺は笑顔でその言葉に返答していた。
次に見た夢に、その言葉をかけてきた人は出てこなかった。いや、もしかしたらいたのかもしれないが、俺の意識はすべてハイタッチを交わしていた相手と、敵に集中していた。どこか他人事のように見ていた夢の第一印象は、鮮やかな水色だった。どこぞで出会ったような、とは思ったが、そりゃ図書室でもあったし主人公だしで当たり前だと起きてから気がつく。そんな水色のそばにいるのは青色と赤色。隣にいたチームメイトが舌打ちした。心配しながら彼の様子を見ると、 ぎゅっと胸が苦しくなった。本当に彼は、あのときハイタッチした少年なのだろうかと。ボードのスコアはすでに大幅に引き離されており、3Qが終了した現在からの追いつきはほぼ難しい状態にあった。
次に見た夢は、どうやら前回の続きのようだった。きつく手を握りしめた彼に俺はそっとタオルを掛けていた。言葉はなにも出てこなかった。やっと振り絞って出た言葉は、他者の言葉によって遮られた。
"なんだ、花宮ももそんなもんか"
ぎりっと、彼の身体が再び強ばった。声かけは、また失敗で終わった。
最後の夢は、俺が高校にはいる前のようだった。彼はまだ俺の隣にいて、ボールを手に持っていた。彼はあのときと同じようになにかを考えているかのように視 線を下に向けていた。どうした?と声をかけても、気の抜けた返事が返ってくるだけ。もうすぐ家だから、といって別れようとしたときに、ふと、彼は言った。
"俺、別の学校受ける"
俺にはよく分からなかった。だけれど、夢の中の俺は驚いたような表情をしていた。
"も、好きにすればいい。"
"まこ?"
"じゃあな、"
彼は、そういって消えた。
それから、いくつかの夢を見たが、彼が出てくることはなかった。

「・・・花宮って霧崎第一の無冠じゃん」

夢の状況整理をした後に出てきた第一声はこれだった。となると俺は花宮と同じ学校だったということだ。つまり今吉翔一と同じ学校だったということだ。なんてこったい。知りたくもなかったことを知り、ベットの中でうずくまること数十分。おもむろに携帯を手にとって開くと、1通のメールが届いていた。それは相田からのメールで、内容は、

「原作、とうの昔に始まってるのは分かってたけどさ」

本日は4月のある日曜日。





他校は異様ににぎわっていて、よけて中に入ると、オールコートでの試合が行われていた。うーん、帰りたい。一応持ってこいと言われた物は持ってきた。

「___レフェリータイム!!」

原作知識は詳しくというほど持っていないが、この宣言はたしか、黒子が怪我する場面だったかな。本来なら代わりにはいるのは小金井のはずだ。しかし、呼ばれてしまってここに原作には関係ない異分子がいるということはまた違っているのだろう。

「さっさと着替えてコート入れ!!!!」

日向の声に、ベンチにいた1年が身体を震わせたのを、俺は見逃さなかった。



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火神視点


黒子が倒れた後すぐに、日向先輩はどこかを見て大声を上げた。何事かと思って何人かの視線がその方へ向く。体育館入ってすぐの場所には、私服に身を包んだ人の姿。だるそうに視線を動かした彼は、黒子を見ているようだった。彼は近づくと、日向先輩に視線をずらし、少ししてからため息をつき、手に持っていた鞄を開けた。彼が取り出したのはバッシュとユニフォームだった。

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ー!出るの!?」
「飽きたら小金井、交代な」
「おい、。なに勝手に言ってんだ?さっさとコート入れ!」

小金井と話していたら日向に思いっきり蹴られた。解せぬ。
というか、部活さぼっていても結構親しい関係にあるのね、俺。感覚つかめてないのは俺だけかね。
コート内に入ると、俺を見ていた海常のエースと視線が合う。いや、俺じゃなくて火神に集中してくれないかな。

。」
「・・・?」
「日向で攻める。サポートでOF入ってくれるか」
「・・・了解」

どうやら俺は完全に小金井の立ち位置のようだ。でもやっぱりシュートせねばつまらないよなぁ

「伊月」
「うん?」
「ついてこいよ」
「へ?」
「初手、ボール俺に」
「あ、ああ」

熱血でがんばるのは俺の好みじゃないので、速攻だけやって退場しましょうか。イレギュラーはおとなしくしているのが吉なのでね
試合が始まった瞬間ダッシュした俺に気がついたのか、ボール待ちして3Pを打とうとしていた日向が方向を変えてスクリーンに入った。それを横目で見てから 伊月に視線をずらす。フリーの選手の後ろに周り、伊月からパスを受け取る。俺はボールを持ったまま飛ぶ。いや、さすがに物語の後半の火神のようにはいけないけどね。高校時代、ダンクは得意分野だったのだよ!
ガッコン、とゴールが揺れてボールが落ちる。

「なっ」
「さすが・・・」

よし、満足。あとは日向に任せますかね。


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相田視点


「あいにく、ウチは一人残らず・・・諦め悪いのよ。

優しい時は並の人!!スイッチ入るとすごい!!けど怖い!!二重人格クラッチシューター、日向順平!!

沈着冷静慌てません!クールな司令塔!かと思いきやまさかのダジャレ好き!伊月俊!!

仕事キッチリ縁の下の力持ち!でも声誰も聞いたことない!水戸部凛之助!!

やる気は基本ありません!でもやるときゃ特攻!チームのアシスタント、!!」


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結論だけを言おう。誠凛が勝った。あの後第3Qの終わりまで粘ったが海常の得点を超すことはできず、日向たちのスタミナ切れも相まってなかなか点が取れないようになっていた。時々自分も点を入れるようにはしていたけれど火神がDFに入ったのが丸わかりで代わりに俺がマークされるようになってしまったから、本当に少しだけ。その後4Qになって黒子と交代してそれ以降はベンチ。どうやって勝った か?ただ火神がブザービーターと同時に得点入れて逆転しただけ。まぁその過程で点取り合戦になったり、火神のアリウープが以上に長かったりしただけ。いや、だけではないんだろうけど興味ないというかまじめに見ていなかったので割愛。
日向と海常の主将である笠松さんの握手を横目にさっさと帰ろうとして伊月に腕を捕まれて止まった。帰らせろと言っても逃がしてはくれなかった。なぜに。まぁ黒子が病院行ってる間に逃げ出して帰路についたのだが。


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誠凛視点



「あれ?くんは?」
「え?」
「・・・逃げたっぽい?」
「まったく、いっつも勝手なんだから」
先輩って、黒子の代わりにはいってた先輩ですよね?」
「ええ、そうよ。2年のPFよ」
「でも一度も見たことねぇっすよ?」
「ああ、あいつは去年からずっとあんな感じだよ」
「練習にはほとんどでないからな」
「なんでですか?」
「さあ?」
「まぁ、あいつが帰ってくれば嫌でもくるだろ」
「?」


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……次の日。気がついたら8時でした。まぁ、いつも通りかな。悲しいことに遅刻はせずに学校につきそうだ。

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