黒子のバスケ

7


会場にはいる、けど試合には出ない。そう伝えて俺は控え室から出た。3時間の休憩が入る為か、会場の席はあまり人がいない。適当な席に腰掛けて、電車に乗ってる暇をつぶすために持ってきた本を取り出す。
コート内はがらんとしていて、何名かの職員が動いているだけとなっている。昔は、こんなコートでたくさん試合したのだと思うと、どこか不思議な気分……って、俺はそんなに試合をしていない。だめだな、俺との意識がごちゃごちゃになってる。さっき控え室で言い放ってしまった言葉だって、本来なら"俺"が言う言葉ではないのに。こっちに来る前の大学の記憶とかもなくなりかけているのに、勘弁だ。


「あれ?たしか誠凛の人っすよね?」

しばらく時間がたって、まばらに人が入り直した観客席。隣に誰かが座ったのを横目で確認した瞬間、そのさらに奥から、聞き覚えのある声が聞こえた。無言で視線だけを返すと、あれ?という言葉がさらに続いた。

「え、間違ってないっすよね?」
「おまえは少し前に戦った選手も覚えられないのか」
「だって反応が返ってこないんですもん」

そこには海常の黄瀬と笠松さんの姿があった。

「試合なのにここにいていいのか」
「別に……」
「は?」
「試合に出る気はないからここにいても問題ないんです」
「え、なんでっすか?」
「試合に出る気がないとか、バスケなめてるのか?」
「いいえ。そんなことはありませんよ。」
「じゃあなんで……」

読んでいた本を閉じて、聞いてくる2人に視線を合わせる。あーあ、こんなのがキセキの世代で、俺らがかなわなかった選手なのかと思うとちょっとショック、かな。

「誠凛のエースは今の段階だと火神で、6人目で出てくるのは小金井。PFは俺の他に土田がいる。」

それに、1年だって体格はそこそこいい。

「だから俺が出る番はありませんので」

その時の俺の表情を見た2人の顔がゆがんだのを、俺は見て見ぬ振りをした。

秀徳との試合がどうなったかなんて、分かり切ったことだ。途中、秀徳が勝つと思っていなく なっていった観客も少なくはないが、俺は誠凛が勝つと知っているから、ただ時間をつぶすように試合を観戦した。黒子の天敵となった高尾という少年。学年が一緒だということは、毎年秀徳と当たるたびに黒子は高尾に警戒しなければいけないのか。ま、一年目は問題ないんだろうけど。来年とかどうするんだろう。さ すがにそこは原作知らないし俺にもわからん。
無事試合も終了し、帰ろうかとするところで声をかけられた。

「誠凛と合流するのか?」
「しませんけど」
「えっ」
「……、なら一緒にいくか?」
「は?」
「飯。黄瀬もいいだろ?」
「いいっすけど……」

どうしてこうなったんだろうか。気づけば雨降る中2人と歩いていて、かのお好み焼き屋にいた。

「なんで俺を?」
「んー興味があったから?」

店員に料理を注文し(俺は飲み物だけ)水を飲みながら、笠松さんは続けた。

「黄瀬がコピーできないのは、キセキくらいだと思ってたしな」
「そうっすよ。確かに自分の能力を上回るプレイはできないっすけど……」
「能力を上回るのはキセキくらいだと思っていた?」
「ああ」

届いた飲み物を飲みながら、他チームに話していいのかと悩む。俺は別にかまわないけど、俺の立ち位置って自分で言うようなものじゃないし。ただの凡人だし。

「んー、調べれば分かると思いますけど……」

ちらっと黄瀬を見ると、もんじゃをほおばりながらきょとんとしていた。あーこりゃ自覚なしで覚えてもいないか。あのときキセキフルメンバーだったってのに。正直こちらは話したくもないというのに。

「すみませーん」


____________
黒子視点


火神君とともに店の中に入ると、そこにいたのは黄瀬君とその先輩、そして先輩だった。先輩はこちらを見ると嫌そうな表情を浮かべていた。食べ物を頼んでいないのか。目の前には飲み物しか置かれていない。

「あっれー?なんでここにいるのかなー?君?」
「相田、目が笑ってない。」
「ちょっとこっちきなさい!」

ぐいっと腕を引っ張られた先輩は、カントクによって皆のいる席へと引きずられていく。そして、僕と火神君は黄瀬君たちと相席することとなった。カントクのしかる声と、どうでも良さそうな先輩の返事を聞きながらも、いつしか思考もすべて黄瀬君たちとの話へと移っていった。


____________

相田の小言を交わしながら、雨がやんだら即帰ろうと心に決めて飲み物を飲む。途中、秀徳の1年2名が入ってきたりしたが、うん、俺には関係ない。

「飯は?」

高尾とともに移動してきた笠松さん(またお隣)は声をかけてくる。

「腹減ってないですし」
「おまえスポーツマンだろ?」
「家で食べるので」

携帯がマナーモードでふるえて見るとメールが来ていた。それはある人からのメールで俺は返信せずに携帯をしまう

「そっちの人って、正邦と最後戦ってた人ですよね?」
「ああ」
「俺、秀徳の高尾っていいまっす!」
「知ってる。……。」
さんですね。よろしくでっす」

元気なやつ。そういえば高尾もキセキと戦ってぼろ負けしたんだっけ。よくもまぁ、負かした緑間とチームくめるよなぁ。


その後、お好み焼きのひっくり返しで騒動が起きたが割愛。ついでに店から帰ることも割愛。ただ俺が途中で引き上げたからしらないだけ。






from.今吉先輩
sub.久しいなぁ
IH、Aブロック通過おめでとさん。
試合すんの楽しみにしてるで

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