振り回されてばかりの君へ七題

3.生まれる前から決まっていたこのポジション


「はい。プリント。時々ふらっと休むのやめなさいよね。」
「日数は計算している」
「1年の時から計算していくってどういうことですかね……?」

とあるマンションの一室。広々としており綺麗な部屋に私はいた。目の前にはのんびりとコーヒーを飲む櫂の姿。三和はいない。時刻はすでに夕方になっており、日が暮れ始めている。

「とりあえず、プリントは渡したから。それと、三和が心配してたよ。私にメール送るのはいいけど、ちゃんと三和にも連絡しなさいよ」
「お前から連絡がいくだろ」
「そら同じクラスだからね。」

朝方、櫂からたった一通のメールが届く。「今日は休む」とだけ。メールがあるだけいいことなのだろうが、まず学校に来てもらわないと困る。

「それと、三和が嘆いてたよ」
「……なんのことだ」
「櫂が家に招待してくれないー!って。なにかあった?」
「俺のことをつけてきたことはある」
「なにしてんだか……」

私はそっと溜息をついた。

「教えてないだろうな」
「教えてないよ。教えていいって言われてないし。でも、こういうことが今後続くなら教えるよ」
「……ショートケーキでいいか」
「大振りのイチゴの乗ったやつね」
「いいだろう。次来たときに用意しよう」

男の間柄でいえば三和と櫂は仲良しだ。なにかとつるんでいるし、言い方は古いかもしれないけどニコイチというものだ。ツーカーともいうだろうか。私とはやはり男女の差があるのか、そこまでの仲の良さはない。こうして家に行き来する間柄ではあるが、学校じゃずっと一緒にいるわけでもない。ましてや櫂と三和は他の女子から人気がある。一緒にいれば目をつけられるのはわかりきっている。それでも他の男子よりは一緒にいることも多いが。

女子として生まれた時点で、こういう関係になるというのは予想できる。しかし少しだけ、同性での友情も体験してみたいと思うのだが。

「……どうした」
「ううん。明日はきちんと学校来なさいよ」
「……」
「かーい?」
「わかってる」


2015/12/31


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