振り回されてばかりの君へ七題

7.そういうオチだって分かってたよ!


某日。地区大会が開催され、その優勝はチームQ4になった。メンバーは先導アイチ、葛城カムイ、戸倉ミサキ、そして櫂トシキの4人。わかっていたことではあるが、私がよくいくショップから出たチームは地区大会にて負け、全国に行くことは叶わなかった。
チームQ4は圧倒的な強さを見せた櫂と、ほどほどの力を見せた3人によって優勝を果たす。といってもこれで全国大会で勝てるのかと言われればわからないところだ。
私は一応、友人の応援ということで観客席にいる。別の場所にはカードキャピタルの面々なのだろう、三和を含めたメンバーがいた。生憎私は三和以外の知っている人はいないためそちらには近づかない。
しかし、櫂もよく出場する気になったものだ。こういった大会に出たいのなら、ヴァンガードの甲子園にでも出ればよかったものの。……まぁ、3年と折り合いが付かない以上、出場もできないだろうけど。

けれど、こうして櫂がヴァンガードをしているのを横から見ていると、昔を思い出す。昔は4人でよくやったものだ。私と、櫂と、三和と、そして伊吹。あのメンバーの中で、伊吹だけが今後江にいない。中学に上がるときに学区の関係で別の場所に行ってから音沙汰はない。櫂が引っ越したことをきっかけに、三和は一時期ヴァンガードをしていなかったし、私も男女の差というものがあったのか少しずつ疎遠になっていた。
もし4人一緒だったら、と考えるが、それは今更過ぎる。引っ込み思案で友達があまりできない伊吹を1人にしてしまった私にも非があるのだ。もしそばにいれば、もう少し違った関係が築けていたかもしれない。

「よっ」
「……あっちにいるんじゃなかったの?」

観客席からQ4の姿が見えなくなり、そろそろ帰ろうとしたころ、三和は姿を現した。

「偶然見えたからな。」
「そ。相変わらずの櫂だったね」
「ああ。本当に強いぜあいつ」
「櫂が負け越したのって、結局あいつだけなのかな」
「あいつ?」
「伊吹」
「……かもな。途中勝ったことはあったけど、ほとんどが櫂の負けだった」

三和も彼を思い出したのか、少し声のトーンが落ちた。

「伊吹、なにしてるのかな」
「元気にしてるといいけどなぁ……」
「いじめられてないといいけど」

思い出すのは、小柄で、うつむくと顔が隠れてしまうその容姿。明るくて、誰とでも仲良しだった櫂とは真逆の子。

「……きっと元気にやってるよ」
「……そうだね。ところで三和、カードキャピタルの人と一緒じゃなくていいの?」
「あ、やべ置いて行かれる。じゃ、また学校でな」
「ええ」

三和は人混みをかき分けながら消えていった。少し違うがああいって来て帰っていくのを台風のような、というのだろうか。

「……私もかえろ」

のんびりと私も帰路につく。昔のことばかりを気にかけている場合でもない。学校も部活も、ヴァンガードも、やることは多い。
伊吹も、きっとどこかで元気にやっていることだろう。いずれまた、機会があれば会うかもしれない



……と、思ったことはあったが。

「……」
「……」

目の前にいる長髪の男。身長は高いが、どこかで見覚えのある容姿をしている。私服のためどこの高校にいるのかはわからないが、高校3年となった今では卒業もあるので正直今更感がある。

「……もしかして伊吹コウジ……?」
「……ああ。」
「うっそ。久しぶり。元気にしてた?」
「ああ」
「なんかずいぶん変わったね。身長も伸びたし。櫂も三和も身長伸びてさーほんと疎外感だよ」
「女子と男子では体格差があるからな」
「そんなのわかってるよ。でもやっぱり寂しいじゃん?それに伊吹も伸びて……」

そこまで言って伊吹を見上げる。特に表情に大きな変化を感じないが、やはり男女の差は大きいというわけか。

「櫂と三和には会った?」
「……少し前にな」
「そうなの。私聞いてないんだけどー。櫂も三和も何か隠してるしさー、ほんとずるいよねぇ」

そこまで話すと、後方から呼ばれる声がした。振り向くとこちらに手を振っている三和と、ついてくる櫂の姿があった。手を振り返すと、少し駆け足で三和がこちらに近づいてくる。

「伊吹じゃねーか。こっちきてどうしたんだ?」
「少々、見納めにな。に会えるとは思わなかったが」
「そうだよ。なんで伊吹と会ってたこと話さなかったのさ」
「いやぁ。再会したのもつい最近、ほんの偶然でさ」
「許されない」
「そ、そこを何とかー」

そうこう三和と話していると、いつの間にか櫂も合流しており、伊吹となにかを話していた。


「なに?」

櫂に呼ばれて振り向くと、暇か?と問われる。予定はないと伝えると、ついて来いと言われるだけで、櫂と伊吹は歩みを進めた。

「え、ちょっと」
「あー、今から櫂の家で再会記念でもしようってことじゃね?俺らも伊吹と会ってからゆっくりする暇なかったし」
「なるほどー……って、本当に言葉足りなさすぎでしょ」
「それが櫂だからなぁ」
「いや、櫂はともかく伊吹もそうなってるとは……。まぁその片鱗はあったけどね」
「ほら、いかねーとおいて行かれるぜ」
「まぁ櫂の家知ってるから乗り込めばいいんだけど……仕方ない。いこ」

少し小走りで追いかければ、すぐに追いつく。しかし、こうして4人そろうのは櫂が引っ越してから1度もなかった。やっぱり新鮮というか懐かしいというか。

「それで?櫂の家でどうするの?」
「「ヴァンガード」」
「……だってさ」
「……相変わらずのヴァンガード馬鹿なんだから」

大体の予想はついていたが、まぁ、こういうのも、悪くない、だろう。
だって伊吹は私に、私たちにヴァンガードを教えてくれた、いわば先導者なのだから。




「でもさーなんでこうも何戦もしてるの」
「あははー、ま、櫂らしいといえばそうなんだけどな」
、次」
「三和」
「あーはいはい」
「仰せのままにっと」


2016/01/05


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