クールな君へ5のお題

2.君の笑顔が見てみたい

旅の最中、何度かすれ違ったり鉢合わせたりと刹那と会うことは多くあった。けれどその時私はパパを探していたし、刹那もまた弟の永久君を探していた。お互いがお互いにやることがあって、互いを考える暇などなかった。けれど最終的にホシガミの元に刹那が向かい、刹那の選択を待っていたときに、ふと考えたことがある。刹那の旅は、永久君を探すものだった。それがいつの間にか世界の運命を決めるものになってしまい、ホーリーチルドレンという存在になり、そして、永久君を失った。刹那は旅で、何を得たのだろうと。私には得たものより失ったものが大きすぎると思った。
昔一度、刹那が永久君と歩いている姿を見たことがある。当時はただの近所の人という印象だったが、今考えるとあれが初めてで、最後だったのではないかと思う。あれは、ちょうど雪が降る夏の前。
私はあの時以降、刹那の笑顔を見ていない。

「パパ!今大丈夫……って、あら」
魔界で大魔王をやっている父の元へと行くと、そこにはちょうど刹那の姿があった。刹那は私の姿に驚きを少し見せたが、すぐにいつも通りの表情へと戻った。
「ごめん。お話中だった?」
「いや、今終わったところだ。……それじゃ、父さん。また」
「うむ」
話が終わったところらしく、刹那は相棒であるクールを連れて部屋を出ていった。私はそれを見送ってからパパの元に向かう。
「邪魔しちゃった?」
「いや。刹那が言った通り、話が終わったところだった」
部屋にはすでに、刹那がいたという証はない。
「どうしたのだ?」
「あのね、パパにお願いがあるの」
だからこそ、今がそのタイミングなのだと私は思う。
私が、私たちが本当に刹那の家族になるために。そして、刹那が心から笑えるような場所を作るために。
私たちはまず、歩み寄らなければいけない。他人行儀ではなく、友として、家族として、兄妹として、心が落ち着ける場所を作るために。

2015/05/03

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