我儘な君へ5のお題

2.愛想が尽きた

「未来なんて知らない!」
「……」
休日を利用して魔界に行けば、目の前には初めてであったときよりも何周りも大きくなったグリフォンの姿。俺と同じデビルチルドレンである要未来のパートナーだ。いつも未来と一緒にいるグリフォンのベールが俺の前に1匹(1人?)でいる。
ベールの様子から、おそらく未来となにかがあったのだろう。ベールがいるのなら、未来も魔界にいるかもしれない。しかし、ヒトミを持っていれば自由に人間界と魔界を行き来できるし、それにパートナーがいる必要もないので、もしかしたらいないかもしれない。昔の小さいパートナーならともかく、大きくなってしまった今ではうかつに人間界にそのままいさせることもできず、基本デビライザーの中にいてもらっている。それか魔界に置いていくこともあるので、未来が必ず魔界にいるとは限らない。そしてこの広大な魔界を探す気にも、あまりならない。
「なにかあったのか」
「……久しぶりに人間界に行きたいって言ったら断られたの。友達がくるからって」
「あー、さすがにその図体じゃなぁ……」
「だけど、ここ最近ぜんぜん行ってないのよ!デビライザーの中にも入れてくれないし……。そのぶんクールはいいわね。基本デビライザーの中でしょう?」
じと目でベールは俺の隣にいるクールをみた。クールはぼそりと、俺は魔界に居たいんだが、なんてつぶやく。聞こえてないと思っているのかどうかは知らないが、きちんと聞こえているぞ。
ちなみにここは魔界の大魔王の城。俺や未来からしてみれば父親の職場だ。最初はここに来るたびに配下のデビルが逃げ出していたが、今では慣れたのか、俺らが来てもとくに変わらず仕事をしている。しかし俺たちがいる一室には入ってくる気配はない。デビルチルドレンの力は未知で、恐れられるものなのだろうか。世界の命運を決めたり、デビルをライザーで従わせる、という点ではある意味恐怖かもしれないが。
「……まぁ、未来は友達多いしな。小学校も卒業間近だし」
「でも聞いたわ。中学校という場所には小学校にいる人は全員同じ場所に行くのでしょう?」
だったら何時でも会えるじゃない。ベールはそういってふて腐れた。
確かに小学校から中学校までは義務教育で、公立ならそのまま地区で区切られた中学校に行くことが多い。しかしあくまで多いというだけで、中学受験をして私立に行く場合はその限りではない。直接聞いたわけではないが、俺や未来のいる新宿小学校でも受験する人はいるらしい。
「……それでも一緒とは限らないし」
「なんで?同じ場所にいるなら一緒じゃない」
「いや、まぁ……」
「……、俺たちデビルと人間じゃぁ、感性が違うのさ」
黙っていたクールがぼそりとつぶやいた。その声は小さいにも関わらず、俺とベールの耳に届く。
「そもそもデビルは、1個体に執着なんてしねぇ。俺たちパートナーデビルのほうが珍しいのさ。デビルは気まぐれだからな。仲魔になったデビルだって、大半は気紛れだぞ。気が向けば知ってるやつに会うことはあれど、率先することはない。でも人間は違うだろ?」
「……まぁ、な。俺も永久探しにここまで来たし。会いたくなれば会いに行く、下手すりゃ一緒に暮らすなんてこともあるしな。」
「きちんとした約束がある中で気まぐれで来られても困るってこった。ベールだって、今この瞬間に急な来客が来ても困るだろ」
「……たしかに」
「そういうこった。わかったんならおとなしくしてろ。どうせ明日にはくんだろ」
「むう」
クールの言葉に納得したのかしてないのか、ベールはふて腐れたようにクッションに頭を埋めた。言いくるめたのか、納得させたのか、正直それでいいのかとも感じるような会話内容ではあったが、本人たちがいいのならいいのだろう。
まぁ、おそらくだが
「本音としてはベールが人前に出たらまずいってだけなんだろうけどな……」
「そりゃそうだろ。」
ベールに聞こえないようにつぶやいた言葉に、クールはうなずいた。
もう少し、未来はうまく説明してくれないものか。デビルの存在を知っている人間は少ないから、特にベールと頻回な交流ができるものと言えば俺くらいしかいないのだから、いつもなんでもかんでも俺に来てしまう。それこそ、アポなしの突然に。
「はぁ」
「もう腐れ縁になってるんじゃないのか。」
「しかもきょうだいだしな……愛想が尽きても交流は消えないさ……」
「まず愛想が尽きてないのだから、そんな心配しなくていいじゃないか?」
「……」

2016/9/22
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