ニアミス

サイバースルゥース(/ハッカーズメモリー)

EDEN。それは人の生活になくてはならないものと化したもの。昔なら銀行や郵便局に行って手続きしなくてはならなかったものが、全てEDENで出来る。本当の、現実世界とまるで変わらない、仮想世界。けれどそこはやっぱり、電脳空間であるからして、現実世界のような秩序はなく、ハッカーと呼ばれる存在が裏で暗躍していた。
・・・・・・といっても、一般人であればハッカーのいる場所に行くことなんてないし、関わることはないだろう。運が悪いと、関わるかもしれないけど。
「あら、いらっしゃい。どうかしたのかしら?顔色が悪いけれど」
いつも通り、そう、いつも通りにフォームにいるデジモン達の様子を見に、デジラボへと赴けば、いつも通りにそこの管理人である御神楽ミレイさんが出迎えてくれる。
「いえ・・・・・・先ほど、杏子さんの特性ブレンドを飲みまして」
電脳探偵の上司でもある暮海杏子さんは、自作のブレンドコーヒーをなにかと振る舞いたがる。コーヒーにマヨネーズは序の口。餡子とか、なんか固形物まで入れる始末。
「お味はいかがだったのかしら?」
「コーヒーの苦みに餡子の甘みがミスマッチして、さらにそれに海ぶどうと明太子が多彩なつぶつぶ感を醸しだし・・・・・・名状しがたいものになっていました」
「あら、それは楽しそうね」
「!?」
「やっぱり貴方ではなく、彼に頼んだのは正解だったわ」
「!!??」
ぎょっとした表情を見せても、彼女はけろりとしている。というか、まさか彼女があの名状しがたいコーヒーの材料提供者なのでは
「これでも、伝手はいくつかあってね。とある何でも屋にお使いを頼んだのよ」
「そ、そのお使いとは」
「あら、実際に堪能したでしょう?」
「なんてこった!」
あの材料はやはりミレイさんが提供していたのか。なにかしらで杏子さんと接点があるとは思っていたが、こんな所でも接点を設けているとはだれが思うだろうか。というより、ミレイさんも正常な味覚を持ってはいないのではないだろうか。
「彼もハッカーで君と同じようにデジモンに関わる人材だけど、こうしてお使いまで頼めるから便利ね」
「俺の所にもお使い頼んでいた気がしますが・・・・・・?」
「ええ。優秀な人材がいて助かるわ」
「・・・・・・」
というか、一体どこまでコネがあるんだこの人は。探偵といい、ハッカーといい・・・・・・。いや、デジラボを運営している時点で、ハッカーとは関わりがあるのは想定しておくべきだったか?まだまだ考え不足であると思い知らされる・・・・・・ではなく。
「そのハッカーさんは、杏子さんの特製ブレンドを知っているんですか?」
「さあ?どうかしらね。少なくとも、疑問に思いながらも全ての材料を手に入れてくれたわ。ちなみに、そのブレンドにはリンゴ酢も入っているはずよ」
「なんで言わなかった物を言っちゃうんですか。あのお酢の風味のせいで、苦みと甘みと酸味と辛みとが混沌を作り出していたんですが」
ああ、思い出すだけで倒れそうだ。
「ふふふ。大成功だったと、彼に伝えないといけないわね」
「是非、そのハッカーさんには特性ブレンドを飲んで欲しいですね・・・・・・っ!」
以外と、世間は狭かった。こんなに身近に、アラタとは別のハッカーがいるなんて!しかもそのハッカーのせい(おかげ?)で、あのブレンドを飲むことになるなんて!
・・・・・・デジモンを手に入れている時点でハッカーであるということは、この際忘れよう。





「・・・・・・くっしゅん」
「ちょっと、急に何。風邪引いてるならマスクくらいしなさいよ」
「ごめん(・・・・・・なにか寒気が)」

2018/01/07

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