ふたりでひとり

FGO

「おはようございます。先輩方」
カルデアでの朝は、だいたい彼女の声で始まる。彼女がノックをして入った部屋には1つのベッドと簡素な机、椅子などが並んでいる。ベッドの上の布団は膨らんでおり、そこに誰かがいるのは一目瞭然だった。
「お疲れの所申し訳ありませんが、そろそろ起床時間です」
彼女の声で、布団がもぞもぞと動き出す。そうして隙間から見えたのは、オレンジ色のくせっ毛だ。少しして、ばさりと思いっきり布団が飛んだ。
「おはようございます」
「おはよう!マシュ!」
オレンジ色の髪を持つ少女は、落ちた布団を拾うと再度ベッドの上に投げ、マシュと呼ばれた彼女の元へと近づく。
「今日もレイシフト?」
「はい。といってもまだ時間はありますが」
「ん。りょーかい!すぐ着替えるから、食堂に行っててくれる?」
「わかりました。」
2人の少女が和気藹々と話している中、再度ベッドに投げられた布団が動いた。マシュはそれに気がついて声をかけようとしたが、それよりも早く少女によって部屋の外へと出されてしまった。部屋に残ったのは、少女ともぞもぞ動く布団だけだ。
「ほら、さっさと起きて。朝ご飯なくなっちゃうよ-」
少女の言葉で、布団がベッドの横に追いやられ、黒髪の少年が体を起こした。
「・・・・・・さっきマシュきた?」
「起こしに来てくれたよ。あたし、部屋で着替えてくるね。」
少女は少年が起きたのを確認してばたばたと部屋を出て行った。少年はそれをぼうっと見送ると、ゆっくりと体をおこし、カルデアに来てから支給された服へと着替える。白を基調としたそれは、真新しさを感じさせるほど、汚れがない。しかし少年はそれを気にかけることもなく手に取った。
身支度を調えて部屋の外に出れば、ちょうど隣の部屋から少女が現れた。同じく白を基調とした服に、黒いスカートをはいている。
「ん、しっかり起きたね」
「・・・・・・あのさぁ。」
「うん?」
「・・・・・・いや。なんでもない」
少年はなにかを口にしようとしたが、少女のニコニコした笑顔をみて口を閉じた。少女は首をかしげるが、深追いはせず、少年の手を握って廊下を歩き出す。
「今日は何だろうねぇ。エミヤ来てくれたから食事が美味しい!」
「まぁ、基本サーヴァントは食事しなくていいらしいし。食べる人間は少ないからなぁ」
今現在、このカルデアはほんの少人数の職員と、多人数のサーヴァントがいる。それはすべて、世界が終わりに向かっていて、とある騒動を境に多くの人間が死亡寸前にまで陥ったからだ。否、死亡者もいる。おかげでカルデアの何カ所かは修繕もされず立ち入り禁止状態。生きている職員も現在の状況打破のために駆り出されている状態だ。無論、2人も例外ではなかった。2人は人類最後のマスターとして、サーヴァントを使役し、この現状を打破する役目を担っている。彼らの動きが、人類の命運を決めるといっても過言ではない。
とは言っても、2人はただの一般人であり、過去にサーヴァントを使役していたマスターと呼ばれる魔術師との関連はなに1つない。そのためか、逆に知識がなさ過ぎた。それを補うのは、パートナーであるマシュであり、上司にあたりDrロマニであり、サーヴァントたちであった。
「おっはよー!」
「おはよーございまーす」
食堂の扉を開けば、そこにはまばらに職員がいるのと、サーヴァントが数名いた。サーヴァントも食事はしなくてもいいが、しても問題は無い。サーヴァントは元々人間であるためか、食事には抵抗はない。よって生命活動に意味はなくても食事をとる者もいた。
「おはようございます。」
「おはようマシュ。」
「はい。よく休めましたか?」
「まぁそこそこ。」
マシュのいるテーブルに2人は腰掛けた。マシュは2人のことを先輩と呼ぶが、実際カルデア歴は2人よりもマシュのほうが長い。それでもマシュは2人を先輩と慕い、2人はマシュをパートナーとしてかわいがっていた。
「今日も食事が終わりましたらレイシフトになります。」
「じゃあ誰がいくか考えないとなぁー」
「あ、そういえば清姫連れて行くって約束した」
「・・・・・・はい」
「はい」
「では準備が出来てからレイシフトしましょう。先に準備していますね」
「こっちも食べたら合流するね」
「はい。失礼します」
マシュはそう言うと食堂を後にした。同じテーブルに残ったのは2人だけだ。そうして、食事をとりながらレイシフトするサーヴァントを誰にするか話し合う。これはレイシフトできるサーヴァントの人数が6名を越えてからよく見られる光景だ。誰がいくとか決まっている訳ではなく、マスターである2人が相談し、そしてサーヴァントがそれに同意した場合のみ、レイシフトすることになっていた。といっても、あまりサーヴァントがレイシフトを断ることはないが。
「んじゃ、あたし女性陣に声かけてくるよ」
「はいよ。また後で」
「はぁい」
食事を終えて、2人はちりぢりにカルデアを歩く。サーヴァントたちがいる場所はある程度わかっているのか、歩みに迷いはない。2人はそれぞれサーヴァントに声をかけ、マシュのいる場所へと向かう。
「いこっか」
「いくか」
2人はサーヴァントが揃っているのを確認して、Drロマニらの指示のもと、レイシフトを行う。向かう先は、2人の知らない世界だ。過去であっても、2人の生きる時代とは全く違うからか、その世界は別世界のように思えた。
「今日もよろしく、お兄ちゃん」
「よろしく、妹よ」
2人は2人でレイシフトする。魔力は2人揃って少なく、唯一の取り柄は2人が揃っていればレイシフト適正が100%であることだ。1人だと適正率はがくんと落ちた。それでも2人は気にした様子もなくマスターとして活動していた。それは唯一のマスターだから、という理由もあるが、なによりも互いのためだった。互いが互いを想っていたから、お互いが片割れを守るために、2人はマスターとして戦場に立っていた。
「2人とも!前方に敵サーヴァントの反応だ!」
「了解です」
「「いくよ、マシュ」」
「はい!先輩!」
2人は嘆くことはない。なぜ自分たちがと、理不尽だと声を上げることもない。声を上げたところでこの現状が変わるわけではないし、それによって皆のやる気を下げる訳にはいかない。自分たちの動きが、カルデアの動きを変えてしまうということを理解していたから。所長がいなくなり、上部の、カルデアをまとめる人間がいなくなった。所長の次に適していた人物は現在敵に回っている。考えてみれば、ほとんど絶望的なのだ。このままなにもせず過ごしていれば、未来はなく、人類の滅亡が待っている。動いても、自分たちが失敗すれば人類は滅亡する。未来は自分たちの動きにかかっていた。トップがいなくなったこの状況の中で、やるしかないのだ。それを知っているからこそ、2人はなにも言わずに戦場にたった。
先に待つ未来がどんなものなのか、2人にはわからない。それでも、今の状況を変えるために、ただひたすら戦場に立ち続けた。

「大丈夫。きっと、全部なんとかなる」
「うん。大丈夫。なんとかなる」

待ち受ける未来がどんなものであるのか、それは誰にもわからない。


2018/05/21

FGO始めました。まだ1部2章だけどストーリー見る限り結構主人公立場きついよなぁとおもって。でも選択肢的にそれを見せない感じがしたので。
ぐだーずの設定的には双子の兄妹でレイシフトして、召喚している状況です。2人で1人といった感じ。名前は出してないですけど、どっちかが藤丸立香でどっちかは別名です。



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