沖田さんとノッブ

FGO *ぐだぐだ+水着イベネタバレあり 微ノブ沖ノブ

それは、ある晴れた日だった。晴れている、といってもカルデアの周囲は常時雪に覆われ、雪が降るか降らないかの差でしかない。それでも、猛吹雪であるよりは雪が降らず、日の光が視界に入るというだけでも、どこか気分は高揚してくる。
冬といえば雪、春といえば桜、夏といえば、秋といえば、四季によってそれぞれ連想するものがあって、その四季を感じてきた身からすれば、常時冬であるというこの状況には違和感しかなかった。しかしそれも、このカルデアに長くいることで薄れてきた。というのも、なぜか四季に応じて誰かしらが問題を起こし、結果として海であったりはろうぃんというお盆であったりと経験することによって四季にながれを感じていたから、ということも理由のひとつだろう。ああ、ところで沖田さんの水着はまだいただけないですかね!?
「なに1人で黄昏ておるんじゃ?それともすねとるんか」
「いーえ。ノッブこそなんの用ですか。」
そんな自分でもなんで急にそんなことを思ったのかわからないことを廊下で外を眺めていながら考えていると、どこぞの顔見知りが姿を見せた。同じ日本由来のサーヴァント。メタ的に言えば出典が同じサーヴァント。故によく顔を合わせることになるアーチャー。しかし歴史を垣間見るとめちゃくちゃ刀剣を集めていたのになぜにアーチャーなんですかね。水着になるとバーサーカーになって刀剣をギターにしたりとしっちゃかめっちゃかですけど。私は清光たちをギターとかそんなものにはしませんよ!?……たぶん。
「いやはや、帝都ではじめて会ったが、ずいぶんと不思議だと思ってな。人斬りにしてはずいぶんと刀さばきがなっとらんと思ったが。」
主語もなく、誰、ともノッブは言わなかったがその言葉だけでも大体検討はつく。つい先程顕現を果たした私の、沖田総司のオルタナティブ。
「ああ、私オルタですか。私も自身が抑止の守護者というものになっているのには驚きました。たしかエミヤさんと同じだとか。」
「さっきせんぱーい、などといって話しておったぞ。マスターにベッタリかと思ってたがちょこまかと動きよる」
似てもいない声真似をしながら、ノッブは面白くなさそうに口に出す。どうやら帝都ではずいぶんとマスターにくっついて動いていたらしい。マスターの聞いた話だと、顕現したときに記憶喪失のようになっていたらしいので、それが原因だろう。
「私オルタはマスターしか知らないですからね。私たちは別にマスターを得たこともありますが」
「あの人斬りと記録の共有はしとらんのか」
「英霊になった過程が違いますから。沖田総司としての記憶は持ち合わせていても、サーヴァントになってからの記録は別個扱いですよ。私は帝都でのオルタとしての記録は持ち合わせていません」
「あの人斬りに負けた記録はあると」
「……引き出してみないとわかりませんけどね」
ずいぶんとトゲのある言い方だ。どうやら今日は機嫌が悪いらしい。もっとも、私とノッブはそこまで中が良いわけではないですが。
「なんですか今日は。さてはなにかありましたね。」
「……べっつにー?」
どうみてもなにかあった。思い返したくはないが、本日のノッブの予定を振り返る。午前中は暇しているはずだが、午後からはマスターについてレイシフトをする予定だったはずだ。ははーん、さては
「私オルタにレイシフトの座を奪われましたね?」
「わしはなにも悪くないわ!あの人斬りのせいじゃ!」
「そんなこといってー。あ、さてはあの帝都での騒動終わりにノッブがしでかしたやつのツケですね」
「おいしかったからシカタナイネ」
「それだからメンバーからはずされるんですよ……」
あの帝都での騒動にて、やはり関係者ということで帝都に関する私たちは頻繁にレイシフトに同行していた。そして最後に元凶を食い止めるために、私は初めて私オルタとともにチームを組んだ。自分と組むのは少々不思議な感じがしたと共に、動きやすさも感じた。私はセイバーで、私オルタはアルターエゴ。今後同じ場所で戦うかはわからないが、その事実を得られただけでも、1度組んだのは間違いではなかった。
しかし、その戦いの裏で、待機を命じられていたノッブばものの見事に茶々様と私オルタの逆鱗に触れたのだった。そしてその後、ノッブの姿を見たものはだれもいなかった……完。
「なに勝手に終わらせとるんじゃ!」
「心の内を勝手に読まないでください!?」



「いやぁ、しかし沖田が2人もいるとなるとややこしいな」
「なんでですか。」
「沖田、と呼べば2人とも振り向くじゃろ?」
「まぁそうですね。土方さんは私と私オルタ、どっちも同じだと思っている節があります。」
「いっそのこと渾名でも考えるか?」
「一応桜セイバー、魔神セイバーって呼ばれることもありますよ」
「あ、それは別出典で作者知らないので」
「メタ発言禁止です」





「む、ここにいたのか」
「来たなワシのレイシフトを横取りしたやつめ!」
「いや、自業自得でしょうに」
ぐだぐだと、カルデアの廊下で駄弁っていた私たちの元に、第3降臨姿である私オルタが姿を見せる。同じ沖田総司なのに、長髪で、色彩も違う。見ただけでは同一の存在とは分かりにくいだろう。内面も、英霊として生まれたばかりなのか、どこか幼げだ。
「マスターが2人を探していた。ばとんたっち、だそうだ」
「なにかあったんです?」
私がそう聞けば、私オルタはこくん、と頷いた。
「三騎士に私は相性が悪い。なので引き上げてきた」
「ワシの出番じゃな!」
「もう、調子がいいんだから……。そういうことでしたら向かいましょう。マスターはどこに?」
ルンルンと歩き出すノッブを2人で追いかけながら問う。食堂だと、私オルタは言った。おそらくは他の、いつもの面子を探しているのだろう。そしてその1人は食堂にいることが多い。
「ノッブ、聞こえてました?食堂ですよ」
「わかっとるわい!」
本当にわかっているんだかわかってないんだか。徐々に足の歩みが早くなっていくのを感じながら、私たちは食堂へと向かった。



「ですが、めずらしいですね。いつもならそのまま特攻することも多いのに」
「ほぼアルターエゴで構成されていたから、不利だと感じたようだ」
「ばらんす良く、といつも言われているのに……」
「なにを言うとる。最初は相性も考えずに戦ってたろうに。一番の被害者じゃったろうが、人斬りは」
「まぁ、ええ。そうですね……」
「そんな時もあったのか」
「ありましたよー。いずれ私オルタも体験しますよ」
「そうか……」



「おいリツカ!わしがきてやったぞ!」
食堂の扉を開けてずかずかとノッブは中にはいっていく。その後を追いかければ、食事時ではないのにまばらに集ったサーヴァントの姿。中にはマスターの姿もあった。
「ノッブ、沖田さん。沖田ちゃんもありがとう」
「マスターの役にたてて嬉しい」
「それで、人数揃ったら出発ですか?」
「うん。今エレちゃん呼んでるから、来たら出発ね」
マスターはそういいながらカップに注がれた飲み物を口にした。近くには菓子もあり、待ち時間のちょっとした休憩なのだろう。
「それで今回の人選はいかように?」
「どーせここの番人もおるんじゃろ?」
「番人って……エミヤもいるよ。あとは兄貴とオルタリア。」
マスターが示すのはクーフーリンとアーサー王。アーサー王のほうは私オルタと同じく反転した存在だ。オルタという性質はそこまで珍しいものではないらしい。
「お、遅くなったのだわ!」
バタバタと、食堂の扉が開き、金色の髪をなびかせながら、エレちゃんと呼ばれていたエレシュキガル、冥界の番人は駆けつけた。日本でいうと地獄の番人か、天国の番人か。そういったことは宗教によって違うものだし、仏教においては私は地獄にいくことが決まっている。サーヴァントという存在になってもそこは変わらないだろう。
「よし、いこっか。みんなー行くよー」
マスターの声で、食堂の奥の方で別のサーヴァントらと話していた3騎が合流する。これできれいにセイバー、ランサー、アーチャーが2騎ずつそろったことになる。この状況で相性のよくない敵に遭遇したときは……きっと力押しだろう。
「いってくるね、沖田ちゃん。ゆっくり休んでて」
「マスターも気を付けてくれ。私はここでまっている」
私オルタはそういって近くの集団へと近づいた。どうやらそこには坂本龍馬たちがいるらしい。知り合いがいない場合、孤立することも少なくはないが、サーヴァントとなった素質があるためか、友好関係は意外とどうにでもなる。彼女もなんとかなっているようだ。
「さっと終わらせよう!」
「ワシがいれば問題なかろう!」
「ずいぶんと張り切ってるな」
「わ、私も負けてられないのだわ」
「油断は禁物だ。慎重に。」
「調子にのると痛い目みますよー」
「ふん。問題ないな」
結果、アルターエゴが苦戦したという戦いでは容易に勝ちを手にいれた。しかしその後、アサシンやキャスターなど、有利のとれない敵とも遭遇し、ごり押す結果にもなったのだった。





「いつものことすぎてなんとも言えませんね」
「うむ。勝てたのだから良いがな」
「せめて私オルタもつれてくればちょっとは……」
「…………その無言の圧力はやめてほしいな、沖田さん」




「あ、な……」
「なんじゃ、我に見惚れておるのか?」
とある騒動があった。得体の知れない箱。ごり押しで開けようとした私たち。なぜかよくわからない特異点が作られ、そこに放り込まれた結果、ノッブが分裂した。
いや、分裂というか数多の可能性のノッブがたくさんいたというだけなのだけれども。
そしてそんな数多の可能性のノッブは特異点の消失とともに消えた、はず、だったのだが。
「なんでその姿になってるんですか魔王信長!」
「いやぁようわからん。」
けろっとそう言って笑ったノッブは、いつもと違う姿。言い換えるならそう、あの特異点にいた魔王信長。ノッブの成長した姿のような、その名前の通り、魔王っぽいような……
「ちとあべんじゃーになって再臨したらこうなっての。」
「ちょっとクラス変えてくる、みたいな気楽なものなんですか!?」
「簡単なもんじゃよ。こう霊基をちょちょいと……ああ沖田は経験したことなかったかの?」
かちん。いえまぁそうですね。ノッブはアーチャー。水着になってバーサーカー。そして今回なぜかアヴェンジャーになっている。 
私にだって水着が来れば!……クラスはなにになるんでしょう?正直セイバーよりアサシンの方が向いていると思うんですが私。ランサーやアーチャーの適正は……ないとおもいますし、キャスターもないでしょう。おや、そう考えるとクラスって案外絞られるんですね。
「この姿になろうとも、沖田の知っている我が消えた訳ではない。あんしんせい。」
「……別に、なにも言ってません。」
すうっと表情が変わった魔王信長からそっと目を離す。
別に、いままでいたノッブがいいとか、そういう訳ではない。ただ違和感がある。外見が変わっているのに、内面はノッブであると、なにも変わっていないのだと心が告げている。特異点の中の本能寺で、満足そうに焼かれたノッブと、同じ。
……いや、焼かれてないですね。なんでかけろっと帰ってきましたね。あのしんみりし私の心を返して!?
「それで?なんでその姿でいるんです?」
「沖田、我の姿好きじゃろう」
……。……。
思考停止。急にノッブは何を言い出すのか。
「な、なに言ってるんですか!」
少し声がひっくり返ったことに自分も、そしてノッブも気がついた。ノッブはいつもの甲高い笑い声を出す。
別に、好きだとか、そういうわけでは、ないので。
いやーまったくノッブが急になにを言い出すかと思えば……
「いや、我であればどの姿でもいいのか。」
「ばっっっかじゃないですか!」
顔が赤いのは、どうか気がつかないでほしい。



「魔王なワシもかっこよかったじゃろ?じゃろ!」
「…………」
「沖田ぁーそんな照れなくてもよいじゃろー?」
「照れてません!」



「ノッブー!見てくださいよ、水着ですよ水着!」
るんるん気分で廊下を駆け出し、いつもの部屋の扉を開ける。ノック?そんなことしてもすぐ開けるんですから問題ありません。見られて困るものもないでしょうし。
ちょっとした問題が起きて、あの特異点にいたときは黒を基調とした水着。けれど今は最初に予定していた白を基調とした水着。これはまだノッブに見せたことはありません!
「知っとる知っとる。あの人斬りサークルの姫が水着になったんじゃろ……え?」
扉を開ければ
「かわいいでしょー似合ってますでしょー?ふふーん、沖田さんだって水着になりましたよー!」
「あのときとは違うな?ジェットはどうしたジェットは」
「しっかりありますよー。見えてないだけです。ノッブのくそださTシャツとは訳が違います」
「あのシャツもいけてるじゃろうが!」
ノッブはそういうが、あのシャツはいかがなものでしょうか。やっぱり沖田さんの水着が一番ですよ!ね、マスター!
「しっかし、うむ、」
「……なんです?言いたいことがあれば言ったらどうです?」
「いや?あのジェットなるものも良いなと思っていただけじゃ。よいではないか、ジェット。こういうのをなんと言うか?ろまんがある、だったか?」
「…………誉めてもなにもでませんよ」
「……だーれが人斬りを誉めてるんじゃ、わしはジェットをつけたあやつを誉めとるんじゃよ」
「ええノッブはそういう人ですよね!私のこと差し置いてあの女とコンビを組んで!ふーんだ」
前回のレースに夏で差し置いて水着になった恨みは忘れていません、ええ。ノッブはそういう人です。こっちのことはお構い無しで人の心を揺さぶるだけ揺さぶって。けど身内には甘くて。だーから裏切られまくるんですよ!
ノッブに最初に店に来たのが間違いでした。土方さんのところに行くべきでした。茶々様もきっと誉めてくださいますし。選んだ相手が間違ってました。
そのままノッブに背を向けて、私は廊下に飛び出した。


「……ういやつよのう」


2019/04/20~10/25

沖田さんとノッブのお話が書きたくて。実は水着レースはプレイしていないので、もしかしたらノッブは彼女をこんな風に評価していないかもしれない。



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