石灯籠

Fate

ぽつ、ぽつ、ぽつと、
行き先を照らすように、それは灯りをともす。
その灯りに誘われるがまま足を進める。
何歩も、何歩も、何歩も、
その先に何があるのかも知らず。
しばらく進めば、鳥居が見える。
鳥居の先はまるで水中のようにぼやけ、先は見えない。
しかし、何故か灯りだけは煌々とひかっていた。
その意図にも気がつかず、足を踏み入れようとすれば、くいっと袖が引かれた。

「まだ、ダメです」

いつの間にいたのか。この地域ではあまり見ない金髪の少女は、袖を引っ張った。
けれど、意識は、想いは、鳥居の向こう側へと向いていく。
「ダメなんです。そっちに行ってはいけない」
「なぜ?」
行かなければならない。そう伝えても、少女は首を横に振った。
「私は、貴方を迎えにきたんです」
「迎え?私は君を知らない」
「それでも構いません。ですが、私は約束をしました。貴方を幸せにすると」
ぐっと、袖をつかむ力が強くなった。意識は鳥居の向こう側に向いているのに、何故かその手をふりほどくことはできなかった。
「貴方が覚えていなくてもいい。貴方との思い出は、私が覚えています。何度でも、はじめましてをしましょう。あのとき、貴方が2度目のはじめましてをしてくれたように。」
少女はそう言って、顔を上げた。振り向いた私と視線が交わる。普段は結ってある髪が、はらりと風になびいた。___普段?
「共に。私は貴方の剣となると誓いました。いまこそ、共に参りましょう、■■。」
___わたしは、きみをしっている
けれど、その記憶は、記録は見つからない。なのに、何故か彼女を見ていると懐かしくなる。とうに、人としての感情も、想いも、消え去ったはずなのに。ただの掃除屋として、機械のように動くだけの、人型だったというのに
少女の手を、私は手を取った。ふわりと、少女が微笑む。
「ありがとうございます。」
お礼を、私ではなく君が言うのか。その意味を、私はしらない。
「___せい、ばー」
「・・・・・・っ、はい。行きましょう、アーチャー」

2018/09/16


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