3人寄ればなんとやら

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ぽかんとしている俺をよそに、黒髪の少年___高尾和成は俺の手を引っ張った。いってきまーす!という大声に、兄が返事を返したのが聞こえた。俺の声ではく、高尾の声だったが兄はなんてことのないように返事をしたのだった。
引っ張られてついた先は、公園だった。バスケのゴールがお飾り程度にあるちっぽけな公園だ。その公園にあるベンチに俺を座らせると、高尾と桜井は俺の目の前にたった。高尾はにやにやと笑っていて、桜井は俺と高尾を交互に見て不安そうだ。

「いやぁ、しょーちゃんも思い出してるとはおもわなくって!」
「・・・俺とお前らの関係ってなんだよ」
「んー、俺とりょーちゃんは幼なじみで、しょーちゃんとりょーちゃんが同じミニバスチーム。俺はりょーちゃん経由でしょーちゃんと知り合ったかなー?ねー」
「あ、うん。僕としょ、灰崎君はミニバスで一緒に試合しています・・・」

おどおどしていながらも、高校で見かけたような言葉を発することなく桜井は口を開いていた。

「えっと、ミニバスで灰崎君に出会った頃には思い出していました。でも灰崎君は聞いても知らないと言っていました。だから普通のチームメイトとして、一緒にいました。今はクラスも一緒です」
「だから兄貴はお前らになんの反応も示さなかったのか」
「うん。俺もかれこれ1年くらいはしょーちゃんと遊んでるからね」

高尾はそういうと、いつの間にか地面に置いていた鞄を開いた。そこから出てきたのは見覚えのある丸いもの。

「ま、それよりも!バスケしよーぜ!」




____________





「つか、高尾。そのあだ名なに」
「え?"しょーちゃん"。かわいいっしょ?」
「どこがだ!」
「しょーちゃんも、俺の事、今まで通り"かずくん"って呼んでいいのよ?」
「そんな呼び方してねぇだろぜったい!」
「あはは・・・和成君も祥吾君も落ち着いてくださいよ」
「・・・、カズの事ほっといて1on1するか、リョウ」
「えっ、あ、うん」
「ちょっとりょーちゃんも俺をのけ者にするの!?」
「えっ、いえあのすみません」

***



あれから約1ヶ月。卒業式も終了し、後は入学式があるだけののんびりとした時期。途中、帝光中に行かない宣言をしたあとすぐに帝光中の合格通知が届いている事を知ったり、俺とリョウはなにかとペアを組むことがおおい腐れ縁になってしまっているのだと知ったり・・・結局3人で帝光中に入学することになったり。俺らの運命は前回とは大幅に変わってきてしまっているらしい。そんなある日。

「おっそいなぁー」
「まだ時間じゃねぇだろ」
「でもさ、りょーちゃんはいつも5分前には来てるんだよ?」
「まぁ・・・たしかに」

集合時間は13時。お昼を食べた後に遊ぼうという話になっていた。メンバーはいつもの3人。しかし、この場にいるのは俺とカズの2名だけ。リョウだけが、姿を見せていなかった。

「いつもはしょーちゃんがビリなのにねぇ」
「はぁ?カズも遅れてくるだろ」
「でも数的にはしょーちゃんの方が多いですぅ」
「あーはいはい」
「ちょっとぉ!?」
「つか本当、おっそいな」
「行ってみようか?」
「そーだな」

この世の中、携帯という便利な物を小学生が持つ事があるだろう。しかし、俺たちは1人も持っていなかった。だから何かあれば家の電話だし、外だったら突撃するしかない。鞄を手にとり、リョウ家の方向へと歩みを進める。

「・・・あれ?」

ふと隣を、音を鳴らした救急車が通りすぎた。

「なんかあったのかな」
「救急車とか珍しいな」

リョウの家へ進めば、必然と救急車を追う形となっていた。それがどこか嫌な感じを出していた。カズと視線を合わせて足を速めた。救急車は大きな十字路で止まっていた。道路に無造作に落ちていた2つの鞄。そのうちの1つからは見覚えのあるボールが顔を出していた。そして数人の野次馬の隙間から見える見覚えのある髪色。

「リョウ!?」
「りょーちゃん!」

鞄を投げ捨てて駆け寄れば、しゃがみ込んで眉を寄せた桜井良の姿があった。意識はあるようで、俺たちを認識するとほっと息を吐いた。

「2人共・・・」
「ど、どうしたの!?」
「すみません・・・あはは・・・」

リョウの足はだらんとのばしっぱなしで身体は背中の壁に預けたままだ。

「なにがあった?」
「車の衝突事故に巻き込まれちゃって・・・。」
「さっきの救急車?」
「たぶん、僕と同じように巻き込まれた人を連れて行ったんだと思います」
「りょーちゃんは?」
「ええっと、今すごく足が痛いんですが」
「えっ」

少しして新たに2台の救急車が到着し、車に乗っていた人とリョウは病院へと運ばれていった。俺たちは近くの公衆電話を利用してリョウの家族へと連絡を入れてからバスで病院へと急行した。



少しして聞いた話だが、リョウは片足を骨折しており、完治までには時間が掛かるらしい。しばらくギプスは外れないようだ。入学式にはでれるようだが、行動が制限されるのは確定していた。

2013.11.4


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