3人寄ればなんとやら

3

「りょーちゃん、大丈夫?階段とか登れる?」
「大丈夫だと思います。病院でも練習しましたし」
「けど災難だったな。これじゃしばらく体育もバスケもできねぇし」
「そうなんですよね……」

4月。桜がひらひらと舞うころ。晴れ舞台楽しみにしているとニコニコしていた兄を放っておいて、俺はカズとリョウと共に帝光中に足を踏み入れていた。
あの騒ぎの後、リョウも病院に運ばれたが診断としては骨折。完治までは時間がかかり、松葉杖と一緒に過ごさないといけなくなった。そのためいつもしていたバスケも中止となり、外にでて遊ぶよりは家でのんびりするということが増えていた。

「おんなじクラスだといいんだけどなぁー」
「でも帝光中ってクラス多いんだよね?」
「あー……そうそう。運がよければ……って、げ」
「ん?」

人混みにリョウが巻き込まれないようにしながら歩いていると、目の前に見覚えのある色が見えて思わず足を止める。それにつられて2人も歩みを止めた。

「どうしたんですか?」
「……忘れてたわ」
「ん?」
「キセキ、そういや一緒じゃねーか」
「あー!そっか。真ちゃんたちいるかもしれないんだ」
「いるかも、じゃなくているんだよ……目の前に」
「へ?」

俺の見る先には、目立つ頭が数個。紫と、少し離れたところに青、青の近くには桃もいるだろう。それともっと奥に緑と、女子に囲まれているのは黄色か。赤と水色は見えないがどっかにいるだろう。
そこまで考えて、そういえば代表としてあがるのは赤司だったかと思いだす。

「んー、どうする?あっちが覚えてるとも限らないし」
「そうですね……あちらから接触してきたら考える、じゃだめですか?」
「……いんじゃね?俺はもうあいつらと関わりたくねぇ」
「な、なにかあったんですか?あ、すみません、聞いて」
「いや……まぁ色々あってな。さっさと行こうぜ」

さくさくと歩き出す俺の後ろで、カズが小さくリョウへと話す。

「黄瀬に負けて部活やめた過去があるんだってさー。ほら、おなじSFだろ?」
「あ、そうなんですか。」

なんでカズが知っているのか、という突っ込みは面倒だから知らない。どうせ前の時に誰かから聞いたのだろう。緑間かもしれないし、それ以外かもしれない。だがどこまで問い詰める必要もない。
それよりも俺としては気になることがある。
鷹の眼を持つといわれ、コート全体を見渡す力を持っていたカズが、高尾和成が、なぜキセキの世代に気が付かなかったのだろうか。






しょーちゃんが気にする様子を見せたのを感じて、ばれるのも時間の問題だと感じた。記憶を取り戻す前のしょーちゃんは知っていたが、今のしょーちゃんは知らない秘密。いずれ話さないといけないと思いつつもバスケしてたり遊んでいる日々が楽しくてすっかり忘れていた。

「……やっぱり、わからないですか?」
「んー、だね。姿形でなんとなく予想はつくけど。」
「そうですか……」
「りょーちゃんが悲しむ必要なんてないって。先天性のやつなんだもん。仕方ないって」
「でも、そのせいでバスケ部には入れないんでしょ?」

りょーちゃんの言葉にそうだねぇと言葉を返す。実際、入ろうと思えば入れるのかもしれない。しかしこの状態で1軍に上り詰めることはできないし、入れても2軍どまりだろう。それだったら趣味の範囲で終わらせるのも1つだと思った。

「部活、どうしますか?」
「俺のことは気にしないで2人でバスケ部はいったら?」
「そんなことできませんよ!それに、僕もしばらくは動けないですし」

りょーちゃんが少し眉を寄せながら足元を見た。白い包帯は少々制服にはそぐわない。

「帝光中は名門ですから、出遅れれば1軍に入るのはほぼ無理です。それだったら、一緒に何かしていた方が有意義だと思います。……バスケに未練がないといえばそれは嘘になりますが」
「そっか」

帝光中バスケ部、キセキの世代である黄瀬以外はほとんどが最初っから部活にいそしんでいたし、3年間の努力が実って1軍になったひともいれば、3年間努力をしても1軍になれなかったひともいる。1軍から3軍まであるこのバスケ部は、競争率も高かった。その中で1軍までいた灰崎祥吾という人物は、よほどの努力家だったのだろう。

「しょーちゃんはどうするんだろ」
「キセキのことが嫌いなら、入らないことも考えられますよね」
「んー、ま、聞いてみるのが早いのかなあ」
「2人ともなにしてんだ?行かねぇとクラス分け表見えなくなるぞ」
「しょーちゃんが見てきてよー。俺、りょーちゃんと一緒にいるから」
「はぁ!?」

ま、でもそのことについてはもう少し後でもいいだろう。今は3人が同じクラスになれることを願っておくだけだ。

2016/01/05

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