「あー!アヤセの課題プリントなくなってる!」
そんな綾瀬の声が教室の一角で響いたのは、1限が始まる5分前だった。次の時間はちょうど英語であり、その担当は高見先生であった。
「今回やってきたのに!」
「珍しいじゃん。綾瀬が自分でやってくるなんて」
「だってセンセ怒るんだもん。藤堂、城戸、知らない?」
綾瀬はそういって前の席にいる2人へと声をかける。それによって2人は背後を向くが、城戸はすぐに「しらねぇ」と言って前を向き直してしまった。藤堂は黙っていながら、しかし綾瀬と視線が合わない。
「藤堂、なんか知ってる?」
目敏く見つけた黛が問うと、藤堂の視線はさらにずれた。黛はその視線の先を見て、なぜか納得した表情を見せる。しかし綾瀬はそれに気が付かずに藤堂へと突っかかった。
「ちょっと!知ってるなら答えて……」
「綾瀬、あっち」
綾瀬が怒りに任せて立ち上がろうとしたとき、黛が綾瀬の肩をたたき、指をさす。自然と綾瀬の視線もその先へと注がれ。
「あいつー!」
綾瀬は勢いよく立ちあがるとずかずかと窓側の席へと向かっていく。それを見送った後、黛は呆れたように藤堂へと向き直った。
「知ってるなら言えばよかったじゃないか」
「黙ってろって言われたからね。ほら、教えてはいないだろ?」
「屁理屈って言うんだよそれ。」
綾瀬のたどり着いた先には、プリントを取り返されて必死に綾瀬に拝み倒しているとある男子生徒が目撃された、らしい。
犯人を捜せ
(いつものメンバーだと犯人は固定されております。)
2014/8/8