学校生活のお約束七題

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現在、午前10時。広い南条の家の一室にて、自分を含めた9人の学生がそこにいた。9人が座っても余裕の広いスペースと、各自の私物が乗っても余裕なテーブル。そこだけ見れば人によっては憧れる部屋であり、一度でいいから入ってみたい場所でもあるだろう。しかし、俺たちはかれこれ数回この部屋に来ているし、来る理由となれば1つのことしかなく、喜びの表情を浮かべる者は、いない。

「あー……くっそわかんね」

隣に座った稲葉が目の前のあるものを見ながら頭を抱えた。
前方にいる上杉はすでに倒れこんでおり、その隣の城戸はもくもくと進めていた。

「なおりん、なんでお前そんな余裕そうなわけ……?」
「たわけ、貴様らと藤堂では頭のつくりが違う。そんなこと考えてる暇があるなら手を動かせ」

ちなみに現在は8月30日。それだけ聞けばなんとなくこうして集まっている理由がわかるだろう。そしてさらに現在高校3年生。

「別に余裕ってわけじゃないんだけど……」
「うっそだぁ!先生に進学先の相談とかしてる様子全くないじゃん!」
「そうなのか?」
「まだ時期じゃないからな……とりあえず今は学力向上しかできないし」

そういいながら、俺は目の前に置かれたプリントの問題を解く。
現在、ここには9名がいるが、やっていることは全員バラバラだ。俺のように試験勉強しているのもいれば、上杉のように課題に追われている者、中には履歴書や願書を書いているメンバーもいる。ほぼ全員の進路先が違っており教えあうこともなかなかできないというのはつらい面がある。
しばらくして集中力が切れたのが、上杉が声を上げた。それによって数名の手が止まる。中には手の止まらない者もいるが、視線は上杉に注がれた。

「久々に全員いるんだから遊ぼう!?」
「あんた課題終わってないんじゃないのかい?」

黛の呆れた声に、上杉は自信満々の声色で返答する。

「終わってない!けど課題は家でもできる!」
「確かに」

そしてその上杉の言葉に稲葉が同意の言葉を漏らした。

「だってさぁ、こうして集まったの久々よ?AOやら補習やらで全然集まれなかったのに……」
「AOはともかく、補習は自業自得だろ」
「うぐっ……ともかく、そろそろお昼だし?息抜きしようぜ」
「……まぁ、昼食の時間であることには違いないが」
「な?な?」

時計を見ると間もなく12時になろうとしている頃であり、確かに考えてみれば腹がすいているかもしれない。
その言葉に同意をするかのように、何人かがペンを置いた。それを確認したうえで、女性陣が口を開く。

「どっか食べに行くの?」
「そういえば先日おいしいcaffeがopenしたんですのよ」
「いきたーい」
「いいね。息抜きがてら行こうか」

女性陣はそのままそのカフェについて盛り上がってきたようで、こちらの様子などお構いなしのようだ。上杉もなにかを言おうとして口を閉じている。

「……ま、まぁ?男女バラバラになっちまうのも仕方が、ない?」
「行く場所にもよるだろうがな」
「上杉はともかく、藤堂は一緒に行けそうだけどな」
「なにおう」
「さすがに園村たちとカフェに行く気には……」
「普通はな」
「女性向けのカフェって、高いのに量少ないから俺らにはマジで向かねぇって」
「行ったことあんのか?」
「リサーチ済みでっす!」
「あっそう……」

それから数分、どこで食べるかなどに話が盛り上がってしまい、食事のために外出するのはさらに数十分後。そしてその後勉強が進んだのかと聞かれれば、きっと言葉を濁すことしかできないだろう。


勉強できない勉強会
(集中力が続くのは最初の数時間だけ。)

2014/8/10

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