学校生活のお約束七題

5

「藤堂、貴様何度遅刻すれば気がすむのだ!」
「そう文句言いながらいなかった間のノートとってくれてありがとう」

昼休み。すでに4限分の授業が終了しており、残りもあと2限となっている。あらかた全員が昼食をとり終わったであろう時間帯に、教室に一人の少年が入ってくる。数名はまたかという表情とともに、挨拶を交わし、数名は来たのかという驚きの表情を見せる。
少年は自席にカバンを置くと、少し離れた席で喋っている友人らに近づき、冒頭に戻る。

「しっかしなおりん。今から来ても2限しかないよ?しかも6限目はHRだし」

すぐさま気が付いた上杉が少年に近づき肩を抱いた。少年は慣れているのか全く気にしていない。

「HR?なんかあったっけ?」
「体育祭の種目決めだってよ。」

少年の疑問に答えたのは近くの椅子に座り、背もたれに腕を乗せてくつろいでいる稲葉だ。

「もー、体育祭なんて勝手にやってて!ってかんじ」
「そんなこと言ってるとやりたくもない種目にされるよ」

あの事件以降会話が増えた女性陣もすぐそばにおり、近くに行われる予定である体育祭に否定的な言葉を飛ばしていた。

「でもよ、なんで今から来たんだ?俺だったら休んでるぜ」
「俺も俺もー!」
「まずはescapeしないことが大切ですわよNaoya」
「そうだよ!なんで遅刻したの?」

園村の言葉の言葉に少年はにっこりとわざとらしい笑みを浮かべて

「起きたら12時だったんだ。不思議だよな」
「不思議もなにもただの遅刻じゃねぇか!」
「失敬だな。目覚ましが止まってたんだよ。俺のせいじゃない。目覚まし時計のせいだ」

さも自分は悪くないのだというかのように言う少年に、誰かが一発、入れた。

「そんで急いで学校きたわけ?」
「いや、飯食ってから来た」

頭をさすりながら少年は近場の椅子を引いて座った。

「ずいぶんゆっくりしてきたんだね」
「急いでもなにも変わらないしね」

そういいながら、和気藹々とメンバーで会話をしていると、バンッと勢いよく扉が開いた。教室内にいた生徒がその扉の方を向く中、少年とそのメンバーは慣れたように視線を逸らした。

「ほら、お呼び出しきたぞ」
「いや、もしかしたら別の……」
「藤堂!!」
「お前じゃん」

扉の向こうには、1人の教師……このクラスの担任である高見は教室の中まで入ってくると少年の首元をつかんだ。

「ちょっと職員室まで……ね?」
「ね?って言われてもー」

ずるずると引っ張られ、少年の姿が教室から見えなくなる。数秒してから教室内はなにも変わってないかのように時間が流れていく。


遅刻常習犯の理由
(「で?なんで遅刻してきたんだい?」「目覚まし時計がなりませんでした。俺のせいじゃありません」「その言い訳は聞きあきたわよ!」)

2015/01/01

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