学校生活のお約束七題

6

何度目の出来事か、今はもう思い出せない。初めての事かもしれないし、もう何十回も繰り返しているかもしれない。けれどすでに記憶はおぼろげになってしまい、それを思い出すことはできない。

「おーい!」

後方から声をかけられて、振り向く。そこには肩にカバンを下げて開いている手を振り回しているクラスメイトの姿。歩みを止めて彼が来るのを待つと、彼は走ってこちらに来て俺の肩をたたいた。

「おっはよー。珍しいじゃん。早くに来るなんて」
「まるで俺がいつも遅刻しているみたいじゃないか」
「みたい、じゃなくて本当のことっしょ?」
「……まぁ、な」
「ギャハハ!じゃあ今日は早く行って稲葉たち驚かそーぜ!今日は俺、課題やってきたんだぜ?」
「お前が?」
「偉いっしょ!」
「今日は雪が降るのか?」
「槍だったりしてな!」

他愛のない会話。けれどそれは何度も繰り返していること。それに気が付くのは俺だけで、ほかの人は誰も気が付かない。まるで今日という日が初めて来たかのように。


今月何度目だ
(そしてこれから、何度目かもわからない、あの事件が始まる。)

2015/2/5

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