近しい人への恋心で5つのお題

3.当たり前なんかない

前は、当たり前だと思ってた。
彼と一緒にいて、笑っている
それが当たり前のことなんだって。
でも・・・
今は、そう思わない。
現に、彼とはもう一緒にいられないのだから
1人で街を彷徨っていた時に、私は一人の人と出会った
とても優しい人。
私を怖がらせないように、接してくれた人
私を、養子として迎えてくれた人
あの人がいなければ今ここに私はいない。
本当に、あの人には感謝してる
でも、時々・・・ううん、毎日のように彼を思い出す
別れてから、もう永い月日が流れたように感じるけど
彼は今どうしてるんだろう。
元気で、いてくれているだろうか。
彼は私と違って、あの家に必要とされているから。
私のような目にはあっていないといいのだけれども
「メルティア。また外を見ているのかい?」
「ごめんなさい、お父様。つい・・・」
気づくと、後ろにはいつの間にかあの人がいた。
今の私にとっては養父・・・父親。
「謝る必要などないさ。・・・なにか、悩んでるようだね」
「・・・。置いてきてしまったから。」
今の私は、学者を目指していた。
お父様の役に立ちたくて。
お父様の目指す、デリス・カーラーンの平和の為に。
だけど、揺らいでしまう。
本当は、何がしたいのかって。
彼を置いてきて、何をしたかったのかなって
好きで別れたわけでもないけれど。
なんで最後に、話していかなかったんだろうって
「後悔からは、何も生まれない。反省をすれば、次につながるだろうけどね」
「私は、後悔をしているの?」
「私から見れば、そう思うけどな」
後悔を、しているのだとすれば
「メルティアが時々話す、彼の事かな?」
「・・・、はい。」
“うん、似合ってる。”
私の髪に花を引っかけて、そう笑った彼
“たとえ、さ・・・たとえここがなくなっちゃっても・・・
俺たちは一緒だよな?“
不安そうにうつむいて、いつもの彼らしくない声でつぶやいていた彼
“また晴れてる時に・・・今度はもっと早めに来よう”
そう、約束した彼
結局、私は彼の事が・・・
「会いにはいかないのか?行こうと思えば、いけるだろう?」
「・・・駄目ですよ。私はもう、あの家の子供ではないですから」
他人となってしまった人がいる所に、行く事なんてできない。
「もう、彼と会うことも・・・出来ませんから。」
淋しくても、苦しくても、彼と会うことはもう・・・
「・・・、気分転換でもしてくるといい。今日は、久々の晴れ間だからな」
「・・・はい。」
父に背を押され、家をでた。
外は、あのときのように晴れていた。
あの花畑は、今もあるのだろうか。
また来ようねって、約束したあの花畑は。
「・・・行ってみようかな。」
道は、きっと覚えてる。
彼が、手を引っ張って連れて行ってくれた場所だから。
ある程度まで花畑に近づいて、私はふと歩みを止めた。
周りの景色が、あのときと何かが違う。
まるで、誰かに踏み荒らされたような。
いやな予感がした。
もしかしたら、もう・・・
「っ・・・そんな・・・」
走ってたどり着いた花畑は、もう無惨な姿になっていた。
あのときの、色鮮やかな花はほとんどなくて
蝶も、1匹も飛んでいない。
誰が、こんなひどいことを?
そう思ったけど、今の現状では、分かり切っていた。
この花畑も、当たり前に存在するわけなかったんだ。
だって、今この国は戦争をしているのだもの
だから、いつか無くなってしまうんだろうなってあのときは思ってた
でも・・・約束したから。
もう1度、あの花畑を2人で見ようって
でも・・・その約束は、もう叶わない
彼と一緒にいることが、当たり前ではなくなってしまったから
この花畑があることも、当たり前ではなくなったから。
それでも
「ディオス・・・」
もう1度、彼と一緒に見たかった。

2010.10.16

inserted by FC2 system