「おめでとう」
「え？」
双子の片割れから言われた言葉。
最初はどんな意味かわからなかった。
「誕生日、おめでとう」
「･･･あぁ、どうしたんだ突然」
戦争のまっただ中でこんな祝いも出来ない中、養父に拾われてからも言われることの無かった言葉。
だからすっかりわすれていた。
そうだ、今日は誕生日だった。
でも、それは同時に
「メルティアも誕生日おめでとう。」
「ありがとう、ディオス。
これでまた１つ成長したね」
「今の年にもなってそういうこと言うなよ。」
「ふふ、ごめんなさいね。」
プレゼントもケーキもない。
ただ、“おめでとう”と言うだけの誕生日。
戦争もない裕福な家であったら、なんて考えることはなかった。
誕生日に、1度別れてしまった彼女と一緒にいるだけで幸せなのだから。
交わせないと思っていた言葉。
ディオス、どうしたのそんなにうれしそうにして。
･･･いや、またこうしていられてよかったなって。
･･･そうね。
2010.09.07