たなばた

なりきりダンジョン(X版)

「今年も雨、かな」
外は厚い雲に覆われて、いつ雨が降ってもおかしくない天気だ。
所々、雲目が切れて日光が地面に降り注いではいるが、この時期では暗い。
この状態では、今年も月と星をみることはできないだろう。
「なんだよー、願い事聞いて貰えないじゃん」
雨が降ってしまったときの場合にディオは家にいた。
いつもならそとに出ているが、この天気で外にでて雨が降ったらびしょ濡れになってしまう。
そのためエトに外に出ないように言われているのだ。
一体何を願ったのかはしらないが、外の竹につけた短冊の願いが叶わないとおもってつまらなそうだ。
時空戦士の物語が書かれた本を手に取ったまま外を覗いている。
「暇そうだね、2人とも」
「エト。」
「暇!なんてこんな中途半端なんだよこの天気」
「梅雨時期だし、しかたないんじゃない?」
外では、すこし強めの風が吹いて竹を揺らしていた。
「ふふ、今日は七夕だからこんなの作ってきたよ」
そう言ってエトは微笑みながらお盆に乗っけた何かを持ってきた。
エトからそれと受け取って机に置く。
「ゼリー?」
「そ、七夕ゼリーだよ」
「おいしそー」
川をイメージしたような数色のゼリーの上に2つの星が乗っている。
「今日は織姫と彦星が会える日だからラ」
「でもさ、雨が降ったら会えないよな」
スプーンですくったゼリーを口に含みながらディオは言った。
「1年に1度しか会えないんだもんね」
私もゼリーを食べながら話す。
織姫様と彦星様は1年に1度、七夕の今日しか会うことができない。
結婚した2人は、仕事をめっきりしなくなって帝を怒らせてしまったらしい。
それで、1度しか会えなくなってしまったのだと本に載っていた。
そのため、2人はそのときに会うために一生懸命に仕事をしているという。
もっと詳しい物もあるかもしれないが、難しいので深くは読んだことがない。
「大丈夫だよ。雨が降ったらカササギという鳥たちが橋を作ってくれるんだ。」
「なら増水してもあえるんだな」
「そうだよ。ほら、ゼリー食べちゃってね」
「はーい」
話していて止めていた手を進める。
外はいつしか、雲が切れて晴れ間を見せていた。




「昔は雨が降って会えるのか不安に思ったときがあったね」
ふと、何事もないようにつぶやく。
もう、何年も前の話だけど。
「・・・あぁ、今日は七夕か。」
近くにいた彼が、一瞬考えて今日の行事を思い出す。
「うん。でも、雨が降るとカササギが橋を作れないって話もあるからね」
「昔話、または伝説。説なんて結構あるだろ?」
「まぁね。雨は織姫の涙、とか曇るのは2人で会ってるのを邪魔されたくないから、とか」
「どれが本当の話なのかは知らないけどな」
「それも本当でどれも嘘。」
そう言って、私はくすくすと笑った。

2011.07.07

inserted by FC2 system