気づいてしまったこと

なりきりダンジョン(X版)

”助けが必要だったらいつでも言って。必ず手助けするよ”

言ってくれたのは、あの時空戦士
うれしかった。
俺のあこがれである時空戦士の人たちがそう言ってくれることが
だから、もし何かがあったら・・・また時空戦士と一緒に戦える
それは、出来れば起こってはいけないことなのかもしれない
もしかしたらそのせいで世界の歴史が変わってしまうかもしれないから
それでも、うれしくてしょうがなかった。
メルにとがめられても、それでも興奮は止まらなくて
だけど、その”助け”が必要だと思ったときにはすでに知りすぎていた。
俺たちが一体何をしてしまっていたのか
偶然であったロディと、クルールと、エト。
3人(1人と2匹?)はなにも見ていないこと
だけど、俺とメルには見えてしまっていた
”彼ら”が、どんな思いでなにをしたのか
そして、その”彼ら”の正体も
両親の敵討ちと、愛情を求めた”彼ら”
そんな”彼ら”は最終的に・・・なにをしたのか
たどれば、全て”彼ら”のせいだった
だって、”彼ら”があれを行わなければ
この世界はずっと平和で。
やつがこの世界にくるともなかった
時空戦士もずっと平和に暮らしていけたんだ。
なにかを失うことも、なかったんだとおもう
それに気づいてしまってからは
もう、時空戦士の助けは求められないって思った
時々、エトたちが助けを求めた方がいい、なんて言ってくるときもあった
でも、俺はその言葉に返すことはなかった
ごめん、ただ、それしか言うことはできなかった

「ねぇ・・・ディオ。」
「ん?」
夜。
すでにエトたちは眠っている
でも、ロディの姿は見あたらない
そういえばさっき風に当たってくるとか言っていたような
こそっと、エト達に聞こえないようにメルが話しかけてきた
「・・・間違ってたかな」
「・・・なにを?」
「私たちのやってたこと・・・」
「・・・なんでだよ。
俺たちがいつ悪いことしたんだよ。」
「・・・そうだよね、間違ってないよね」
「メル?」
メルの声は、ずっと低くて
落ち込んでいるような声だった
エトがいなくなったときよりも
「ううん・・・ただ・・・2人をみてるとね・・・」
「あの仮面の2人か?」
「うん。あの2人はきっと・・・」
「あぁ・・・だから、決着つけなくちゃいけないだろ?」
「・・・うん。そうだね。」
「明日も早いってロディが言ってたぜ。そろそろ寝よう」
「うん、お休み。ディオ」
「お休み」
メルが言いかけた言葉
それは、俺も理解してる
あの2人は・・・”彼ら”はきっと。

「ディオ・・・メル・・・?」
「ごめんね、エト。」
最終的に、ばれることは明かだった
でも、いやだったんだ
話して、何かがかわることが。
「ディオ君、メルちゃん・・・君たちがクレスたちに助けを求めなかったのはこれが理由?」
「・・・。あぁ・・・」
「だって、クレスさんたちがダオスと戦うことになったのは私たちのせいだもの!」
「デリス・カーラーンの世界樹も、枯れることはなかったし、人も沢山死ななかった!」
そう、”彼ら”は自分たちの復讐で、愛を求めるために、あれを作って
ダオスの故郷でもあるデリス・カーラーンを滅ぼした
マナを使い尽くして
世界樹を枯らせて
そんな”彼ら”は、”俺たち”だ
実の両親を戦争で失って、復讐の為に動いた俺
実の両親に捨てられ、養父から愛がほしくて動いたメル
2人の思いは、最終的に養父を失ったときに復讐に変わり
世界を滅ぼしたんだ
「でも、その出来事がなければ私たちは出会えなかった。
クレス達にも、君たちにもね」
「だけど・・・あの出来事が無かった方が、皆幸せで・・・」
「それは、私たちが決めることじゃないでしょ?
幸せは、皆それぞれ。
まぁ確かに、幸せになれなかった人もいるかもよ?
でも、クレス達は幸せそうよね。
辛いことがあっても、あぁやって立ち向かった。」
クレスさんたちは、あのダオスとの戦いがあって
その前に故郷を失ったりしていて
それでも、今を生きてる
村を立て直して、一生懸命にやってる
「私たちは、あの出来事が起きたあとの世界にいる。
出来事が起きていない世界にはいないんだよ。ね?
だから、そんなこと思ってもなにもないんだよ」
「ロディ・・・」
「それに!私は、ダオスに会うことの無かったことになっちゃうしね
・・・私は、ダオスに出会えて良かったって思ってるから」
「ねぇディオ、メル。
僕はね、2人に会えて良かったって思ってるんだよ?
2人がいてくれたから、ここまでこれたんだ。
そんなこと言ってると、ちくちくしちゃうぞ?」
「・・・ごめん、エト。ロディも」
「・・・うん、ごめん」
「自身と向き合って、どうするか。
いくらでも悩んで、悩んで、最後に決めればいいよ
答えは、2人の心の中にしかないんだから」
正直、これで何かが変わったような気はしなかった
だけど、何をすべきなのかはわかったような気がする
それが、正しいことなのかはわからないけど
「ディオ。」
「メル?」
「わかった気がするの。私たちは、向き合わないといけない。
自分自身の罪と、自分に。」
「・・・あぁ。そうだな。」

それでも、あの人たちの助けは求めなかった
やっぱり、向き合ったとしてもそれは出来なかった
ごめんなさい、クレスさん、みんな。
知らないうちにいなくなってしまって
でも、どうか・・・どうか
この世界で、俺たちが行ってしまったせいで滅びかけたこの世界で
どうか・・・”幸せでいてください


2010.08.24.

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