振り回されてばかりの君へ七題

1.頼むから止めて!


「あら、三和と櫂じゃない。どうしたの?」
「お、か。いやぁ先生に雑用任されちゃってさー。櫂はその付き添い」
「お前が1人じゃ持てないと騒ぐからだろ」
「えー?そうだっけ?」

目の前にいる2人の男子学生。私と同じ高校1年生であり、幼少からの友人の2人だ。三和とは小学校からずっと一緒。櫂は一度引っ越したが高校では地元に戻ってきていた。

「ふふ。それどこに運ぶの?」
「えっと、2階の資料室かな。」

2人の手には視界は確保されているが両手いっぱいの荷物。おそらく男子学生だからと全部任せていったのだろう。女子生徒にすれば非難の声が上がるはずだ。

「資料室って、確か鍵かかってたよね」

私の言葉に、2人は顔を見合わせた。おそらく知らなかったのだろう。それか開いていると思い込んでいたかだ。三和はやってしまったとでも言いたそうな表情を浮かべたあと、櫂の顔を見ないようにして私へ目線を向けた。私も買いの表情を見ないようにしながら微笑む

「鍵、借りてこよっか。どうせ開きっぱなしだったとしても閉めないといけないだろうし」
「サンキュー!恩に着るぜ」
「2人は先に資料室に向かってて。あとから追うから」
「わかった」
「頼むぜ
「あいあいさー」

それから職員室に向かい、鍵を借りると、そのまま階段を駆け上り、資料室へと足を向ける。高校生にもなって1年も満たないが、学校の構造もある程度理解できていたため、迷うことなく資料室へはたどり着いた。案の定、鍵かかかっていたらしく、2人は床に荷物を置いた状態でいた。

「持ってきたよー」
「助かるぜ!」
「今度なんかおごりなさいよ」
「おま、高校生のおこずかいをなめちゃ駄目だぞ」
「どーせカードになってるんでしょーが。」
「そういうだって」
「今はなんのデッキだ?」
「オラクル。バトルシスターデッキだよー。」

会話をしながら鍵を開け、荷物を運ぶのを手伝う。さすが男の子、といった感じですぐに荷物は所定の位置へと戻された。私よりも身長が高いためか、上の荷物もいとも簡単にしまい込んだ。
それから外に出ると、外の天気が悪いことも相まって、さらには電球が切れかかっているのかどうも薄暗い廊下が現れた。荷物運びは長い時間かかったわけではないが、どうやら外の太陽は雲に隠れ、雨が降ってきていたらしい

「うわ、」
「ん?どーしたよ」
「いや、まだ5月ってのにこんなに暗いとは」
「そーいえば、は雰囲気のある場所苦手だったな」
「ほう」
「ちょっと櫂、なに面白そうな顔してるの。ねぇちょっと」

三和の一言に、櫂の表情が変わったのを、私は見逃さなかった。その表情は正直良い印象のないものなので今後一切やめてほしいと思ってる。

「中学だっけか?修学旅行で遊園地に行って、お化け屋敷に入ったのって」
「ええそうですね中学生の時でした!だからってその話いまする!?」
、いめ」
「しないに決まってるでしょ!あんたたちこれ夜とか日が落ちるのが早い時にやったらぶっ飛ばすよ!?」

私の言葉に2人は目線を合わせ、笑った。それを見ていやな汗をかいたのは気のせいだと思いたい。

「あーもう!このお詫びは高くつくよ!」

私はそう言い残して、本来なら走ってはいけないはずの廊下を走りだした。後方で2人が笑っているのは知らない。




「やれってことか」
「櫂、お前が言うと冗談にきこえねーよ」


2015/12/30


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