Actually, it was just the beginning

実際には、始まりに過ぎなかった


「動かないで。」
僕と彼女が会ったのは、とある校舎。僕は自分の体に戻ることもできず、ただふらふらとナルについてまわっていた。無論、調査の時に僕が動き出しちゃうと映像に残っちゃうから、そこはわきまえている。
「あなたは・・・・・・?」
彼女はナルが意図してこき使っている学生だった。ナルたちよりは年下。僕よりは年上。なにかしらの事件があって、夢の中に迷い込んできてしまったらしい。彼女もなにかしらの能力があるのかも。
車の中で、よこになっている彼女は、まだ意識がはっきりしてないのかぼんやりしている。こっちのことも、どこまで理解しているのだろうか。
「気にしないで。いずれわかるから。」
「でも・・・・・・」
「もうすこし眠った方がいい。大丈夫、起きたら全部終わるから」
彼女にとっては不運だったかもしれない。けれど僕にとっては幸運だった。もし彼女がナルと通じれば、僕がこうしていることもわかるかもしれない。本当は、ジーンとつながればいいんだけど。
彼女が現実に戻っていったのを見送って、車の中から校舎を見上げる。英国では見ない、とても古風な建物だ。
___僕の体は、今も日本にある。
本来ならば英国で治療をしたいところだったが、脳に障害が起きている可能性も十分にあり、急変の可能性もあった。その状態で、長時間かかる英国までの旅は、とても危険すぎた。だから今も僕は日本にいる。体が日本にあるからなのか、それともなにかしら理由があるのか、僕は日本からでれないでいる。ジーンたちが英国に帰ったとき、ついて行けるかとおもったけれど、それは叶わなかった。ジーンも、両親も日本で一緒にいたいと話していたが、仕事や学校があって断念。起きるまでは1人かと思ったら、大学入学が決まっていたナルが、日本に来ていた。ジーンとの話を聞いてみれば、SPRのフィールドワークの一環として、日本での調査が認められたと。今は東京という場所で日本支部を開いて研究しているらしい。ナルと、リンだけで。ジーンはシックスフォームにいくことが決まっていたし、そこで勉強できないと大学にもいけないかも、ということで父が反対した。ナルは大学を休学して、研究にいそしんでいる。
ああ、早く起きたいなぁ。



目が覚めて、あたりを見回すけれど、先ほどの少年の姿は無かった。車の中は機材で押し込まれていて、どう考えてもほかの人が入れるスペースはない。
夢、だった?
そりゃそうだ。だってこの場所に少年のような子供はいない。しかもその少年はブロンズの髪で、どうみても日本人には見えなかった。髪色が染めているようなものではなく、天然そのものだった。
いやいやいや!ということは完全に夢や妄想で、私はそんな人を想っていた?ええええ?まだ幽霊って言ってくれた方が面白みがあるのに!
でも少年、まるでまた会えるような言い方をしていたけれど。本当は何者なんだろう?


2017/09/03


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