ガンダムSEED/DESTINY/FREEDOM

アニメ・スぺエディ・リマスターごっちゃごちゃ。DESTINYはTHEEDGE基準
アスラン成り代わり。特殊設定・構成につき注意。名前変換はありません。
成り代わり要素はちょっと濃くなりました。

 カガリらとともに、ヤキン・ドゥーエへと突入する。モビルスーツを置いて要塞内へ。最終的に、敵を殺しながらたどり着いたのは司令部だ。様子を伺いながら突入しようとして、目の前の状況に息をのんだ。2人の男が、打たれて血を流しながら宙を舞った。その内の一人は
「ぁ……」
 司令部にいた人たちが一斉に逃げ出す。それを止めることもせず、ただその人に近づいた。
「撃て……ジェネシ……我等の……世界を奪っ……報い……」
「父上!」
 父は、まだ暖かい。けれど命の灯は、すでに潰えた。父は、母をずっと想っていたのだろう。そして、母を失う原因となった地球軍を、ナチュラルを憎んだ。愛する者を失った報復。父にとって、それがすべて。それを否定し、対立した息子を、父はどう思っていたのだろう。
 父への情はあった。父が好きで、それでも仕事で一緒にいられないことを悲しんだこともある。その時には母がそばにいてくれた。母が死んで、父が仕事によりのめりこんで、息子である俺のことを気にしなくなって。振り向いてほしくて着た赤服も、ラクスとの婚約も、結果として父が振り向くことはなかった。最後の最期でも、父の言葉は息子に対しての言葉ではなく、ナチュラルへの恨みの言葉。親子としての関係は、とうの昔に終わってしまった。母が死んでから。
【総員速やかに施設内より退去して下さい】
 父を抱きとめていると、部屋内に警報が鳴り響いた。近くの端末の画面には、警告と時間が表示されている。端末を動かして確認してみれば、それがジェネシスに関連していることはすぐに分かった。
「アスラン?」
 けれど、ジェネシスだけじゃない。父はきっと、味方もろともすべてを壊すつもりだったのだろう。
「ヤキンの自爆シークエンスに、ジェネシスの発射が連動している?」
「ええ!?」
 解除できないかとプログラムを確認するも、一切の操作を受け付けない。後戻りなどするつもりもなかったのだろう。
「……こんなことをしても戻るものなど何もないのに」
 ジェネシスの発射方向は、大西洋連邦首都ワシントン。威力も考えたら地球すべてが崩壊する。人など、一切が住めない状況になるだろう。それどころか、地球にいる人々が生き延びることさえ難しい。どうにかして、これだけは止めないといけない。
 モビルスーツのもとへと戻り、ひとまずヤキン・ドゥーエから離れる。ジェネシスを止める方法はゼロではない。けれど、そこにカガリまで巻き込むわけにもいかない。
「どうするつもりだ!」
「……内部でジャスティスを核爆発させる」
「え!?」
 そのまま、再度、今度はモビルスーツのまま内部へと侵入する。ジェネシスに対して、対抗できる手段は限られる。ミラーを破壊して照準をずらす。けれどこちらは発射自体を防ぐわけではないため撃たれればその線上での被害は免れない。発射自体を防ぐには、内部からの制御が不可能ならば、あとは外部からの衝撃しかない。しかし、レーザーなどで壊れる代物ではまったくない。先ほど見たジェネシスの構造からしても、PS装甲が積まれている以上簡単には壊れもしないだろう。なら、ジェネシスと同等の力をぶつけるしかない。その手段の1つが、今現在手元にあるならば使う他ないだろう。
「そんなことをしたらお前は!」
「それしか方法はない! お前は戻れ!」
「アスラン!」
「だめだ!」
 後方から追いかけてくるカガリ。それを引き離そうとしてファトゥム-00を機体から切り離す。突入しているところが狭い以上、それがカガリの進行を妨げる。それであきらめて脱出してくれ、と心の中で願った。
 コントロールルームまで侵入し、自爆システムを起動する。キラの時といい、こういったことに何故か縁がある。
 別に、死ぬことに恐怖はない。父の行ったものに責任を取るのは息子である俺の役目だろう。どういう関係であったとしても、家族として父の側にいたのは自分だ。父の悲しみも、恨みも、正しく理解していれば結末は違ったのかもしれない。けれど、過去には戻れないし、やり直すこともできない。いくら後悔したところで、戻るものはなにもないのだから。
 でもそう、一つ悔やむとすれば。カガリと一緒に
「アスラン!」
 聞こえてきてはいけない声を聴いて、数字を押す手が止まった。自分が通った侵入口を見れば、ストライクルージュの姿が見える。乗り手など、1人しかいない。
「カガリ?」
「だめだ! お前!」
 なんでここにきた、とは言えなかった。
「逃げるな! 生きる方が戦いだ!」
「……っ」
 カガリの言葉が、胸を刺した。責任だなんだと言って、結局本心を見透かされている気がした。



「あーあ、いつぞやのシミュレーションを思い出すなぁ」
 人間を相手取ったものであるのに、ディアッカの言葉は軽い。それに対して、ハイネは首をかしげる。
「これが?」
「そうそう。ハイネ、アスランと同じ部隊だったんだろ?」
「そうだけど。……こんな感じだったっけ?」
 ハイネの視線の先には、2機のモビルスーツを前にビームソードを振り回すグフイグナイテッドが見える。ハイネと同じ機体を使っているはずなのだが、ハイネは機体が持つ力強さを使うのに対して、今目の前でフライトユニットを駆使して素早く動き回る機体はちょっと別物では、と思うほどだ。さらに言えば、ハイネの知るアスランはどちらかというと後方、これはシンが前衛に出張るためだったのだが、射撃よりの装備をしていたセイバーを使っていた。接近戦もできるオールラウンダーなことは知っていたが、相手機体に問答無用で突撃する姿は馴染みがなかった。
「むかーし、俺とアスランとイザークの連携見るっていってシミュレーションやったんだけど、あいつら全部ごり押しで力任せに終わらせて、監督してたミゲルに滅茶苦茶飽きられたんだよなぁ」
 グフイグナイテッドがスレイヤーウィップで一機の右下肢を掴んでそのまま巻きつぶした直後ビームソードで左上下肢を叩き落としたのを確認して、えげつねぇとどちらかが言った。
「サポート、ねぇ。ハイネは隠れている母艦を探してくれ。俺はアスラン見てるから」
「お、おう」
 ハイネが戦闘から離脱するのを見送って、ディアッカはビームアサルトライフルを構えた。相手は4機。そのうち1機は撃破済みで、1機は今アスランが四肢をつぶした。残った2機に対して、アスランと一緒に対応すれば、つぶされた機体は母艦に戻ろうとするだろう。乗り手がアスランだとばれたら、こうも行かないだろうが表向きあの機体に乗っているのはイザークだと思われているはずだ。母艦の狙いどころだと思われて動き出す可能性もある。
 結果的に、指揮官が前線に出てきたと思った相手側が母艦を動かしたことで母艦位置を特定。そこをボルテールが襲撃することでこの騒動は終幕した。

「あんた、やばかったんすね」
「どういう意味だ?」
 ボルテールに戻ってきて早々に、パイロットスーツを着たシンにそう言われた。シンの表情が、少し引きつっているがなにかあっただろうか。
「ミネルバにいたときと全然違う動きしてたから。今初めて、ヤキンドゥーエの英雄なんだなって思いました」
「……貶しているのか」
「いーえ、本心です」
「貴様ら、なに騒いでいる」
 格納庫の、グフイグナイテッドの前で話していたせいかやってきたイザークは眉間にしわを寄せた。視線をむければそんな表情のまま、くいっと顎で促してきた。それでシンは思い出したのであろう、やべ、と視線をそらした。
「ボルテールは作戦行動を続ける。ミレニアムには貴様らだけで戻れ」
「えっと」
「あー、ジャスティスに乗って戻れって言われました。狭いっすけど、2人なら乗れますし」
 そう言ってシンは、格納庫の隅にいるジャスティスに目を向けた。赤く装飾されたそれは、見覚えもあるが細部が違うし同名の別機体だろう。武装も違う。あれがジャスティスであることには違和感はないが、それにシンが乗るのに違和感があった。けれど、パイロットスーツを着ているのは、そういうことなのだろう。
「俺だって好きで2人乗りするんじゃないっすから、文句言わないでくださいよ」
「……いや。選り好みはしないさ」
 シンがジャスティスのコックピットに向かうのを見て、1度イザークの方へと向いた。なんだ、と聞かれてその対応に少し安心した。
「ありがとう。ディアッカとハイネにもよろしく伝えてくれ」
「ふん。さっさといけ」
 踵を返すイザークを見てから、俺もジャスティスのコックピットに向かう。すでに座ったシンの横へと入り込んで、座席に手を添えた。ハッチが閉まって、OSが起動されるのを眺めて、うわ、と思わず口にしてしまった。シンにも聞こえてしまってこちらを振り向いてきたのと同じくらいに、ボルテールから発進許可が下りた。
「っと、捕まっててくださいよ。シン・アスカ、ジャスティス、行きます!」
 すでに経路が確保されているのだろう。安定した、そして迷いのない動きでジャスティスは進んでいる。その中で、シンから聞かれた。
「なんでうわって言ったんですか」
 もちろん、発進前に迂闊に言った俺の言葉だった。
「いや……グフイグナイテッドのOS見た直後だったから」
「だったから?」
「滅茶苦茶なプログラミングだなと」
 そういってOSのプログラム画面を開けば、基礎は普通だが途中書き加えたであろう部分が滅茶苦茶なのが分かる。シンにはピンと来ていないようでつい、シンが組んだのか? と聞いてしまった。
「ちょっとは触ってますけど、基本的にハインライン大尉とキラ隊長が」
「キラか……」
 なんでかキラが組んだことに納得する自分がいた。



「ちょっとまて、何て言った?」
「え、だから鳥」
「鳥!?」
 突拍子のないキラの言葉に、正直あきれた。月の幼年学校でのマイクロユニットの課題。徐々に応用が組み込まれるようになった課題は、回数を重ねる毎に難易度を上げている。その課題で何を作るか、というところでキラが言い出した。
「うん。このくらいちっちゃくてさ、手のひらや肩に乗って……」
 手でサイズを示すが、手のひらにのる時点でずいぶん小さなマイクロユニットだ。
「で、こう首傾げて鳴いたり……」
「まさか、飛んだり」
「そりゃ飛ぶでしょう。鳥なんだから」
 ついでにスラスターで宇宙でもとべたりしたらもうサイコー、なんてキラが笑う。
「飛ぶでしょう、じゃないって。キラ、本気?」
 これまでいくつかのマイクロユニットを作っているけれど、自立型というだけでも難易度は高い。飛ばすなら周囲の状況を把握できるカメラも搭載しないといけないだろうし。
「え? ダメ? 可愛いと思うんだけどなあ」
「そりゃ可愛いだろうけど……それ自分で作れるって思ってる?」
「んー……やっぱりむずかしいかなぁ」
 せめて設置型。翼を動かすことはできても、スラスター搭載して飛ばすなんてキラが示す大きさでは難しいだろうに。
「首傾げて鳴いて、肩に乗って飛ぶなんて、簡単にできるわけないよ……。それにキラ、マイクロユニット苦手なのに2週間で作れるの?」
「うっ」
 せめて、百歩譲ってキラが自分である程度マイクロユニットを1人で組めるなら自由にすればいいけれど。自身の苦手なことはやりたがらないキラのことだ、投げ出す未来が見える。
「課題なんだから、もっと簡単なのにすれば? 条件が満たせればいいんだし」
「んー」
「あてにされても手伝わないから」
「分かってるよぉ」
 本当に分かっているんだか、とうんうんと悩みだすキラを眺めた。結局これで暫く悩んで、期限ぎりぎりになって泣きつかれるのだろう。自分の方が誕生日が上だからお兄さんだ、なんて言うくせに、そういうところはどう見ても弟だ。
 たぶん、トリィなんだろうなと考える。マイクロユニットの課題としては難しいし間に合うわないだろうけれど、もうちょっと時間をかければ構築はできるだろうか。というより、猶予はどのくらいあるんだろうか。

「キラ」
「アスラン……」
 結局、あの話をしてすぐに引っ越しをすると母に言われた。ちょうど、さくらが咲く、春のことだった。
「これ……」
 間に合ってよかったと、心の底で思う。手の平には、キラが空想していた鳥形のマイクロユニットがある。性能は最低限だけれど、それはキラのほうが得意だろう。プログラミングは無茶苦茶だけれど、一応こちらよりも早く組み立てられる。
「アスラン」
「首傾げて鳴いて、肩に乗って飛ぶよ」
 トリィ、と鳴くそれは、キラの手へと渡った。マイクロユニットを誰かに渡すなんて、これが初めてだ。また会えるという願いを込めて。それがきっと険しい道のりなのは、漠然と覚えている。
「キラもそのうちプラントに来るんだろ?」
 待ってるよ、と言ってキラと別れる。再会する日なんて、来なければいいなんて思いたくはなかった。

2024/2/19

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