ガンダムSEED/DESTINY/FREEDOM

アニメ・スぺエディ・リマスターごっちゃごちゃ。DESTINYはTHEEDGE基準
アスラン成り代わり。特殊設定・構成につき注意。名前変換はありません。
成り代わり要素はちょっと濃くなりました。

 世界平和監視機構コンパスは過激化する独立運動やブルーコスモス残党の侵略行為に対処するために、カガリ・ユラ・アスハ主導でオーブ連合首長国・プラント・大西洋連邦が共同で創設した組織だという。総裁はラクス・クライン。それ以外の構成員は基本的に3か所からの出向扱いの者たちだという。シンはプラント、キラはオーブから。他にも、俺がかつていたというミネルバの乗務員の多くもそこに出向しているらしい。特に配置されている艦船アークエンジェルについては俺がアークエンジェルにいたときの乗務員も多いということで、アークエンジェルにしてもミレニアムにしても、アスラン・ザラを知っている人は多いとシンは言う。
「ハイネはいないっすけど、ルナとレイもいます。俺の同期です」
「ミネルバの活動時期はいつからなんだ?」
「C.E.73から74ですね。半年前のメサイア攻防戦で撃沈しました……ってか、あんたに落とされたんですけど?」
「……C.E.74年は、ザフト所属だって聞いたんだが」
「メサイア攻防戦の時はオーブ軍の制服着てましたけど」
「……ああ、そういえば74にオーブ軍に移籍したとあったか……」
「……まじで覚えてないんすね」
 ジャスティスの中でそんな会話とシンとするが、やっぱりピンとこなかった。時系列がつかめていないが、パトリック・ザラ関係のものは第一次連合・プラント大戦だろう。C.E.70から72のこと。ジャスティスに乗っていた時は違ったが、それ以外はザフトの赤服を着ていたのでザフト所属の期間だったのは間違いない。ただそれ以降、どういう意図と経緯でオーブ軍になったのかがわからない。意図というか、希望的観測というか、こうしたかったんだろうな、という考えはなんとなくわかるけれど。
 こうしてシンと話してみても、シンや、シンのいう同期とどう過ごしていたのかがわからない。こうして世話になっているというのに、薄情者だな、と心の中で笑った。
つきますよ、というシンの言葉の通りに、視界に1機の戦艦が見えた。大きさからしてモビルスーツは数機収納できるだろうし、生活区域も十分ありそうだ。シンがミレニアムへと通信回線を開いて準備を始めている。それを眺めながら、さてこれからどうするかと思考する。



 メサイアの崩壊とデュランダル議長の死亡にて、戦闘は終了した。デスティニープランは否定され、強制的に従わせるために使われたレクイエムは破壊された。状況も、主義も、兵器も違うけれど、プラントは地球に発射口を向けて、そして阻止された。同じように、人は繰り返したのだった。けれど、一つ違うのは、その作戦にプラント側オーブ側問わず参加していた人々は、結末をきっとわかっていた。それが何も生まないことを。此度の戦闘の前にオーブ所属となったアークエンジェルは多少の被害を受けたが無事だという。ラクスが乗っているエターナルも同様。宇宙はまだ、破壊された戦艦やモビルスーツが漂っており、戦闘意志はないものの混乱している。各勢力はこれから生存者の救出と確認が行われるだろう。
「キラ、先にエターナルに行ってくれ」
 通信回線を開けば、キラの驚く顔が見えた。メサイアから脱出し、そのままエターナルへと帰還すると思っていたのだろう。
「用事を済ましたらすぐに戻る」
 腕の中にいる彼を見ながらそう言えば、わかった、とだけ返答があった。ブースターが勢いを増して、一足先にフリーダムが飛んでいった。それから周囲の状況を見回してから、視界の隅にデスティニーとインパルスが見え、その方向へとジャスティスを動かした。
 そこには、2人の男女がいる。表面上外傷はなく、二人寄り添っている。その近くへとジャスティスを寄せれば、2人の視線がこちらを向いた。
「乗ってくれ、帰投する」
「……どこにするっていうんですか」
 暗に、帰還すべきミネルバは存在しないと言われる。実際、ミネルバを破壊し走行不能にしたのは自分なので言い返す言葉はない。
「君たちを安全なところへ。いやならジュール隊でもいいが」
「……いいっすよ、どっちでも」
 2人が、シンとルナマリアがジャスティスの手の上に乗った。そのまま静かにブースターをふかして動き出す。ジャスティスの母艦はエターナルだが、そちらは終戦にむけてラクスを連れて動き回る必要がある。まだアークエンジェルの方がいいだろうか、と現在位置を確認する。本来ならばザフトの船がいいのだろうが、オーブ所属の機体で行くわけにはいかない。ぎりぎりイザークが許してくれるかどうか、というところなのでどこでもいいという言葉は正直助かる。
「あの、アスラン」
「なんだ?」
「その……」
 ルナマリアがシンを支えながらも言い難そうに口を動かす。ヘルメット越しのためわからないが、おそらく目は泳いでいるだろう。
「その、レジェンドは」
「…っ」
 ルナマリアの言葉で、シンの身体が震えた。レジェンドガンダムは、シンが乗っていたデスティニーと同時期に開発された機体で、乗り手は2人の同期でもある。2人が俺と対峙していた時に、どうやらキラとぶつかっていたらしい。おそらくそこから、2人はレジェンドの行方を確認できていないのだろう。実際、周囲にレジェンドと思われる機体は見受けられない。
「……大丈夫だ」
「なにが!」
「君たちには、ちゃんと話をする機会がある。3人で、一緒に。どの口が、って言われるかもしれないが」
 それでも、君たちは生きているのだから、と、コックピットを開く。2人の視線が上を向いて、コックピットへと向いた。
「「レイ!!」」
 満身創痍で意識はないけれど、それでも命がある。2人の同期であり親友ともいえる、レジェンドガンダムの乗り手、レイ・ザ・バレルはここにいる。



「あ、シン! おかえり」
 ミレニアムの格納庫へとジャスティスが収納され、先にシンがコックピットから出ていく。そんなシンに声をかけたのは、1人の女性だ。赤服を着ているが、ザフトではない服装はたぶんコンパスの制服なのだろう。その近くに1人の男がいる。こちらも同じ赤服だ。それを眺めていると、さっさと降りてくださいよ、とシンに言われた。ヘルメットを外しながらコックピットから出ると、格納庫に収納されている数機のモビルスーツが見える。機体数は少ない。さらにこうして外からジャスティスを見てみると、俺の知っている機体とは外見も性能も少しちがうようだ。さらに言えば、たぶん試作段階の未完成品だろう。武装が最低限で、おそらく戦闘時使えるのはサーベルくらいだろうか。
「ええ!? アスラン!?」
「なぜアスランがここに?」
 周囲を見ながらシンのところに行けば、そばにいた2人から声が上がった。ルナマリア・ホークと、レイ・ザ・バレルだ。ああ、ミネルバにいたシンの同期は今も一緒にいるらしい。俺の同期でかつ赤服となると偶然一緒になる戦場以外ではともに戦わないし、一緒に配属された仲間の多くはもういないから、羨ましいというか、よかったと嬉しくなった。
「あーっと、なんて言ったらいいか」
「……ラクスはここに?」
 言いよどむシンを横目に、2人に問う。それに対してルナマリアがうなずいた。
「はい、今は総裁の執務室にいると思いますけど」
「案内を頼めるか?」
「え、ええっと、はい?」
 ルナマリアがシンの方向を向く。シンがうなずいたのを見て、ルナマリアは艦内へと視線を向けた。こっちです、と言われてそのままついていく。

 アスランがルナマリアについていったのを見て、レイはシンへと近づいた。ラクスからの任務を終えたところではあるが、シンの表情が気になった。
「なにがあった?」
「んーっと、俺にもわかんないってか……」
 覚えてないらしい、とシンは言う。レイは首を傾げた。どういう意味だ? と返せばシンは口をもごもごさせて、歯切れの悪い返答をした。
「なんか、ミネルバにいたころの記憶ないって。アスハ代表庇って怪我して、全部忘れたんだって」



「自分探しは終わりましたか?」
 ルナマリアの案内の下、ラクスの居る部屋へと通される。二人分の紅茶がおかれて、その部屋には俺とラクスだけとなった。互いに一口カップに口を付けてから、ラクスはそう言った。どうやら、自分の行動はお見通しだったらしい。
「カガリさんが心配なさっていましたわ。行方不明だと」
「……それについては申し訳なく思っていますよ」
 服の上からぶら下げた護り石に視線を向けながら、数発は殴られるかな、なんて思う。そのあとに顔を上げてラクスを見ると、少し悲し気だった。それがどういう意味かは、分からなかった。
「久しぶりのプラントは、いかがでしたか?」
「……なにも。イザークたちとは変わりなかったですよ。驚くくらい、普通でした」
 自然体、だったと思う。プラントに、墓地に、そしてイザークたちと一緒にいた間は、意識もしていなかったけれどほとんど素のままだった。けれど、“違う”と思った。
「プラントに、戻りたいと?」
「__いいえ」
 ラクスの言葉に、まっすぐ彼女を向いて言った。彼女と対面するときは、いつも何かを決めるときだ。その関係性を、互いが望んでいるわけではないけれど。
「俺はオーブに戻ります。今の俺の故郷は、帰る場所はオーブですから」



 プラントとオーブの停戦条約が締結され、ひと時の休息が訪れた。これからやることも多いが、ひとまず戦いは終わったのだ。アークエンジェルはオーブへと帰航した。ラクスはプラントへと向かい、今後協議が行われる。そんな中、オーブ領オノゴロ島に、シンやルナマリア、メイリンと訪れた。レイは療養のため今日は来れなかった。
 慰霊碑へと手を合わせて、周囲を見た。2年前の大戦時に失われた多くの人々を祭っているのはこの慰霊碑だ。彼らを祭るために、周囲には自然が多かった。草花が生い茂って、人々の足はここに運ばれていた。けれども、今回の戦争で、閑散として、自然の見る影もない。
「ずっと、ここ嫌で……でも、ずっと気になってて……こんな風じゃなかった。こんな所じゃ。でも、こんなのは、もっと嫌だ」
「シン……」
ここには、シンの家族が眠る。他の俺達はプラントの人間でオーブに近しい人はいない。すべてが終わって気落ちするシンを見て、ついてきた。足になった、ともいうが。
「トリィ」
 重たい空気が流れる中、普段と変わらない機械音が聞こえ顔を上げた。視線の先にいたのは、同じように花束を持った2人の男女
「キラ」
 キラとラクスは慰霊碑に花束をささげた。
「来てたんだ」
「ああ」
 慰霊碑に祈りをささげて、そういえば彼らは初対面かと思い出す。メイリンはともかく、そして顔が知られているラクスはともかくとして、キラはあまり素顔は知られていない。そしてキラもまた、シンの姿は知らないだろう。
「シン、彼がキラだ。キラ・ヤマト。フリーダムのパイロットだ」
「え!?」
 きっと、シンにとってキラは思う事も多いだろう。生きていたとはいえ、かたき討ちとして彼を討ち取ったのだから。けれど、結果としてどちらも生きている。あの時の俺とキラのように。
 キラが、シンへと手を差し伸べた。
「だめかな」
 周囲が見守る中で、2人は手を合わせた。
「あ、あの、俺……」
「いくら吹き飛ばされても、僕らはまた花を植えるよ。きっと」
「それが、俺達の戦いだな」
「一緒に戦おう」
「__はい」

「アスランは、これからどうするの?」
 シンとルナマリア、レイはプラントへ。キラもラクスとともにプラントに行くことになった。一足先に宇宙へと上がったラクスを追うためにキラは準備に勤しんでいる。そんな中取れた時間で、キラは俺の下へとやってきた。誰もいない、海岸のベンチに隣り合わせで座った。
「……正直、悩んでいる」
 そう返答すれば、なんで? と返ってきた。
「プラントは、俺の故郷だ。でも、あの状態で脱走している以上、さすがにザフトには戻れないし」
「オーブにいたらいいじゃない」
 さらっと言ったキラに、驚きの視線を向けてしまった。それもまた、キラには予想外だったのか首をかしげられてしまった。
「オーブの軍籍もらえたんだし、そのままいたら?」
「いや、もともとはザフトの人間が」
「カガリはどうするの」 
 ザフトにいた人間がそんな簡単に他国の軍人になれるわけがない、と言おうとしたところをキラは遮った。その言葉は、見て見ぬふりをしてきたものだ。第一次連合・プラント大戦のあと、そのままザフトへと戻った自分。今、似たような決断を迫られている。
「アスランは、責任があるって言ってあの時ザフトに戻ったけど、結局どうだった?」
「それは」
「僕もラクスも宇宙にいっちゃうのに、アスランまでザフトに行ったらカガリは誰が守るの」
 先の大戦で危機にさらされたカガリを護ったのは、間違いなくキラだ。式場乱入も、そのあとのザフトのオーブへの攻撃も。過程はどうであれ、護ったのはアークエンジェルとキラたちだ。その間、俺といえばザフトにいて、オーブの敵だったと言っても過言ではない。カガリを護ると誓った俺が、カガリに武器を向けた。
 黙り込んだ俺の隣で、キラは立ち上がった。ごん、という音とともに頭に衝撃が走った。
「いっ」
「たまにはわがままになってもいいんじゃないの」
「……それをお前が言うのか」
「うん。ずっと僕はアスランにわがまま言ってきた。アスランが決められないなら、僕のわがままを聞いて」
 殴られた頭をさすりながら、キラを見上げた。わがまま、なんていうけれど、それは月にいたときの話で、あれからどれくらい経っていると思っているのか。お互い、立場も関係も、微妙に変わってしまったと思っていたけれど。
「……いや、キラのわがままは聞かない」
「アスラン」
「自分で決めるさ。どうするか」
 立ち上がって、空を見上げる。俺が今もここに生きている理由。それはきっと、彼女の存在のおかげだ。彼女のまっすぐな言葉が、俺の心に刺さって、そして俺を生かしてくれている。彼女に対する想いがどういう単語で示されるかなんて、さすがにもうわかる。ラクスと婚約者していた時には、れの文字ですら理解できていなかったけれど。
「行ってくる」
「うん」

2024/2/21

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