ガンダムSEED/DESTINY/FREEDOM

アニメ・スぺエディ・リマスターごっちゃごちゃ。DESTINYはTHEEDGE基準
アスラン成り代わり。特殊設定・構成につき注意。名前変換はありません。
正直成り代わり設定は香る程度であまり重要じゃない

 大体2週間程度で、退院することになった。ひと月寝ていたというのに動けている自身の身体に驚きとちょっとした恐怖を感じた。迎えは、カガリと、護衛のキサカ一佐だった。彼もまた、状況は知っているようで気にしなくていい、とだけ言われた。カガリは目が覚めた時以降、会えていない。オーブの首相なのだから、当然忙しいのだろう。だから迎えも来ないだろうな、と思っていたので正直驚いた。
「お前の部屋、軍用の寮だからマズイと思って別に部屋を用意したんだ。今の状況で、軍人に戻れなんて言われても難しいだろうから……。あ、安心しろ! 信頼できるところだから!」
 カガリはそう言って、俺を車の後部座席へと押し込む。そうしてからカガリも乗り込んで、キサカ一佐の運転で車は動きだした。正直、オーブの詳しい地理は覚えていない。しばらくは世界史や地理の勉強かな、と思うと少し憂鬱になった。ふう、と息を吐くと痛いのか? とカガリに言われた。
「ギプスはまだ外れないんだよな」
「癒着は進んでいるから、来週には取れるようだ。後は以前のように動かせられるようになれば問題ない」
 痛みは強くないよ、と言えばカガリは安心したように息を吐いた。
「その、すまない。聞いたかもしれないが、アスランの怪我は私を庇って」
 怪我の理由は、医師が説明してくれた。上官にあたるキサカ一佐も、療養期間中に病室を訪れて詳細を話してくれている。
「それがその時の俺の役割だった。カガリは大丈夫だったか?」
「ああ、擦り傷くらいで……」
 ふと、カガリの表情が曇った。記憶は失ったが、どちらも五体満足で生きているのだから、カガリが気を病む必要などどこにもない。そう言おうとして、つきりと頭が痛んだ。いつかも、そんな表情のカガリを見たような気がした。

 __カガリは、俺が守るよ



 宇宙における、プラントザフト軍と地球軍との戦い。地球軍による核攻撃でザフト軍要塞の1つが破壊される。その後も放たれる核は、プラントに向けられる。それを見たときの、プラントを故郷とする人々の想いは。三隻同盟の一員としてジャスティスに乗り、ミーティアを操る。空間把握能力はキラに劣るとはいえ、最低限以上の機体操縦は問題ない。モニター上に移る核ミサイルをポイントし、そのままミーティアが備えるビーム砲・ミサイルを発射する。
 《地球軍は直ちに攻撃を中止してください。あなた方は何を撃とうとしているのか、本当にお判りですか。もう一度言います。地球軍は直ちに攻撃を中止してください。》
 ラクスの言葉を知ってか知らずか、地球軍は攻撃を止めることはない。一方、ザフト軍も反撃として、ジェネシス-核エネルギーを使用したガンマ線レーザー砲-を放った。それをよけられたのは、同じ戦場に立つイザークの言葉のおかげだ。ジェネシスは、多くの地球軍を焼いた。その指揮を、父が行ったことに対して、失望と、諦めの境地になった。もう、引き返すことすらできないほど、プラントと地球軍の溝は深まった。
 一度艦へと戻り、機体への補給をお願いしてキラとともにコックピットへと向かう。
「協力な遠距離破壊兵器保持の本来の目的は、抑止だろう。だがもう、撃たれちまったからな。核も、あれも。どちらももう躊躇わんだろうよ
戦場で、初めて人を撃った時。俺は震えたよ。だが、すぐ慣れると言われて……確かにすぐ慣れた」
「あれのボタンも、核のボタンも同じと」
「違うか? 人はすぐ慣れる。戦い、殺し合いにも」
アンドリュー・バルトフェルドはそう言った。その言葉に思わず顔を伏せた。心当たりなんて、山ほどある。戦争の実情すら知らなかった自分が、訓練を得て、ナイフや銃を持って。数え切れないくらい切って、撃った。MS戦においてだって、どれだけの人を殺してきたか。それだけの知り合いを、亡くしてきたか。最初は震えていた手は、いつしか震えなくなって、誰かが死ぬ度に停止した思考は、すぐに次に切り替わるようになって。……親友ですら、心の底から殺したいと思ってしまうほどに狂った。もう、なにも知らなかった時には戻れない。
「核にもあの光にも、絶対に互いを撃たせちゃダメだ。そうなってからじゃ、すべてが遅い」
 キラが、前を向いてそういった。まるで、以前の俺とキラを示すかのようなこの状況が迎える結末を、キラも俺もよく知っている。
「……ああ」

「なんだ?」
 作戦会議中、ジェネシスのミラー交換前に片を付ける必要がある状況において地球軍がプラントへと進撃を開始した。無論、こちらの艦も双方に対応するために出撃する。
2人で話したがっているキラとラクスを置いて、カガリと艦内を急ぐ。カガリの視線がこちらを向いていて、なにかあるだろうかと首を傾げた。
「いや……。今度は私も出られる。パーツのまま持ってきたストライクルージュがどうにか間に合った」
「え」
「じゃあな」
 言い逃げするかのように、おそらく着替えに向かおうとするカガリをとっさに留める。
「ちょ、ちょっとまてカガリ」
 なにげなく、本当に日常的な会話のように言っていたが。カガリが戦場に出る?
「出る? ストライクルージュ?」
 いつの間にそんなものを、という言葉は飲み込んだが、表情が物語っていたのだろう、カガリは少し不貞腐れたような表情をした。
「なんだよ。モビルスーツの訓練は受けている。アストレイの連中より腕は上だぞ」
「いや……けど」
 下手したら、死んでしまう。バタフライエフェクトのように、すべてが物語上の通りに行くわけがない。今は良くても、これからは? 俺だって、いつか死ぬ。
「できること、のぞむこと、すべきこと、みんな同じだろう? アスランも、キラも、ラクスも。私もさ。」
 これは、物語じゃない。現実だ。もうすでに、それがどういうものかをイヤほど知った。だから、自分にできることを、と。アスランとしてやらないといけないことを、と。
「カガリ……」
「戦場をかけてもダメなこともある。だが今は必要だろう。それが」
 でも、それはカガリがすることじゃない。だって、将来きみは
「そんな顔するな。私より、お前のほうが全然危なっかしいぞ」
「え」
「死なせないから、お前」
 面と向かってそう言われて、ああ、自分は死にたそうな顔をしているのだろうか。いまにでも、全てを終わらせたいと思っていると、そう思われてしまうような。
 考えなかったことはない。アスランとしてではなく、私としてだったら、きっとなんの役にも立てやしない。役に立つためには、時には命を代償にしないと、と。私が死んだら、本当のアスラン・ザラが帰ってくるんじゃないかって思えば思うほど、その選択肢は魅力的になった。
「カガリ」
 でも、もうすでに私はアスランで、俺自身になってしまった。物語の行方すら考えられないほどに。目の前にいる彼女を、たとえ物語上無事だったとしても、危険な目に遭わせたくないとおもうほどに。
 ぐっとカガリの腕を引っ張って胸元に寄せる。ぱっと彼女の顔が赤くなった。
「カガリに会えてよかった」
「アスラン」
「君は俺が守るよ」
 たとえ、この世界が、俺がどうなろうとも、彼女を、きっと。今は、それでいい。



 落ちていた意識を戻せば、見覚えのない部屋のベッドにいた。最後の記憶は車の中だったから、もしかしたらそのまま寝てしまったのだろう。遮光カーテンは開かれており、外がすでに夕暮れを迎えているのが分かった。身体を起こして、ベッドに腰かける。
 ベッド以外には机が1つ。それと段ボールが1つ。使われていなかった部屋なのだろうか、特に生活感は感じられない。ぼうっと机を眺めながら、深く息を吐いた。
 夢を、見ていた気がする。モビルスーツを扱って、ひたすらに悲鳴を上げる心を見なかったことにして持つべきじゃない力を振るっていた。光り輝く宇宙で、数多な物体が残骸となって散らばっていくのを見た。光が、すべてを焼くのを見た。その中で、カガリの姿もあって、きっと、いろんなことがあったんだろう。どうしてそうなったのかはわからないけれど、それでも俺はカガリを心の底から守りたいと思っていた。たぶん、恋愛感情として。相手のカガリもその想いは知っているようで……そのすべてを忘れた俺のことを、カガリはどう思っているんだろう。
 それからキラ。キラへの感情はぐちゃぐちゃで。もうあきらめているような、もう取り戻せないって思っているような。友人、なんだとは思う。けれども、なんだかそれだけじゃないような。
 そのほかにも、当時の俺は知っていて、今の俺にはわからない人たち。きっといろいろなことがあっただろうに、なにもわからないことがむずがゆい。それなのに。

 それなのに、思いだしたら心が悲鳴を上げているのはなぜ?

2024/2/8


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