ガンダムSEED/DESTINY/FREEDOM

アニメ・スぺエディ・リマスターごっちゃごちゃ。DESTINYはTHEEDGE基準
アスラン成り代わり。特殊設定・構成につき注意。名前変換はありません。
正直成り代わり設定は香る程度であまり重要じゃない

 目を覚ましたとき、左腕は保護されて、右腕には点滴を刺されていた。痛む身体を無理に起こせば、低い声が聞こえた
「気が付いたか」
 その方向に視線を向ければ、過去、砂漠で出会ったカガリが拳銃を向けていた。
「ここは、オーブの飛行艇の中だ。我々は浜に倒れていたお前を発見し、収容した」
「オーブ? 中立のオーブが俺に何の用だ? それとも今は地球軍か?」
 この時、オーブは中立国ではあったが、地球軍に対しての軍事支援が分かっており、プラントザフト軍からすればオーブもまた、敵国に含まれていた。
 彼女がこちらに拳銃を向けたままなのを気にもせず、右腕に刺された点滴を抜いた。抜けた痕を軽くさする。彼女が拳銃を撃てば、怪我をしている自分はなすすべもないだろう。けれど、それでもいいと思う自分がいた。
「聞きたいことがある。ストライクをやったのは、お前だな」
「……ああ」
 つきり、と胸が痛む。目を覚ます前、俺はイージスに乗って、ストライクと戦った。ただ怒りに身を任せた、私怨も混じった戦いだった。結果として、俺はイージスでストライクを爆破、脱出できたからしただけで、ストライクのパイロットと一緒に死ぬことも、厭わなかった。
「パイロットはどうした! お前のように脱出したのか!? それとも」
 脱出。あの状況で外にでた彼の姿は見ていない。実際、あの状況での脱出は出来ないだろう。それが分かって、あれをしたのだから。
「見つからないんだ! キラが……何とか言えよ!」
「あいつは、俺が殺した」
 やってやったという気持ちと、どうしてこうなったのかという気持ち。けれど、彼が死んだという事は、まぎれもない事実だった。
「え」
「殺した……俺が、イージスで組み付いて、自爆した。脱出できたとは思えない。」
 歯を食いしばった彼女が、震えた手で俺の胸倉をつかんで銃口を突きつける。
「それしかもう、手がなかった……あいつを倒すには……」
 本当に? 入り乱れる感情についていけなくて目から涙がこぼれた。殺した自分が、泣く資格など、ないはずなのに。わかっていて、殺したというのに、なぜこうも心が苦しいのか。
「貴様!」
 起こしていた身体を、彼女に押さえつけられてなすすべもなくベッドへと叩きつけられる。
「……っ! くっそぉ!」
 彼女は声を上げて、俺から離れると壁へと手を打ち付ける。俺に当たればいいのに、それをしない彼女が不思議だった。そして、その姿を見ている自分が不思議だった。
「なんで、俺は生きているんだ……。脱出、しなければ」
 ぼそりとつぶやいた声を、彼女は聞いたのだろう。再度拳銃がこちらに向けられた。だから、戦争ってそういうものだったな、とさっきの、ストライクを撃った俺とおなじだな、とただ漠然とそう思った。
「お前が、俺を撃つからか……」
「キラは! 危なっかしくて、訳分かんなくて、すぐ泣いて……でも優しい、いい奴だったんだぞ!」
「……しってる」
 彼女がそういって、ストライクのパイロットを、キラの名前を呼んだ。なるほど、ストライクのことを、パイロットを気にするのは、彼女がキラの知り合いだから。キラとは、月の幼年学校を離れてから今まで、戦場でしか会っていない。それでも、長い間彼とは一緒にいた。顔も、性格も、癖も、よく知っている。
「やっぱり、変わってないんだな……。昔からそうだ、あいつは」
 プログラミングは得意なのに、機械いじりは苦手で。宿題ですら終わらなくていつも泣きついてくる。人付き合いの苦手だった俺に対して、偏見もなく接してくれるヤツ。いつの間にか家族ぐるみの付き合いになって、月にいた時間のほとんどを彼と過ごした。
「え……お前……」
「泣き虫で、甘ったれで……優秀なのにいい加減な奴だ」
「キラを知っているのか?」
 いつの間にか、彼女の拳銃は下ろされていた。
「知っているよ、よく……」
「え……」
「小さい頃から、ずっと友達だったんだ……仲良かったよ」
「それで、なんで! それでなんでお前があいつを殺すんだよ!?」
 再び彼女の手が胸倉をつかんだ。けれど、それにすらも抵抗する気は起きなかった。彼女の問の答えを聞きたいのは、こちらのほうだった。
「解らないさ! 俺にも! 別れて、次に会った時には敵だった!」
「敵?」
「一緒に来いと何度も言った! あいつはコーディネーターで、俺たちの仲間なんだ! 地球軍にいることの方がおかしい!」
「お前……」
「なのにあいつは聞かなくて……俺達と戦って仲間を傷つけて……ニコルを殺した!」
「だから、キラを殺したのか? お前が?」
「敵なんだ! 今のあいつはもう! なら、倒すしかないじゃないか!」
「馬鹿野郎!」
 本当なら、キラはプラント側のはずだった。月で別れた時、プラントで待っていると、そういって別れた。それなのに、地球軍にいて、モビルスーツで敵対する。しなくて済むならしたくなどなかった。けれどキラはそれで俺の仲間を殺した。その時点でもう、かつての仲には戻れない。
「なんでそんなことになる!? なんでそんなことしなきゃならないんだよ!?」
「あいつはニコルを殺した!ピアノが好きでまだ15で……それでもプラントを守るために戦ってたあいつを!」
「キラだって守りたいものの為に戦っただけだ! なのになんで殺されなきゃならない!それも友達のお前に!」
 好きで戦ったわけじゃない。けれど、彼が俺の仲を殺すから、せめて彼の無念を晴らしたくて。
「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それでほんとに最後は平和になるのかよ!」

 しばらく、無言の時間が続いた。静寂の部屋の空気をかえたのは、ノックしてきたオーブ軍兵だった。迎えが来た、と言われたカガリが立ち上がり、こちらの名前を呼んだ。
「ほら、迎えだ」
 誰の、とは言われていなかったから自分に対しての言葉だったとことに少し驚く。
「ザフトの軍人では、オーブには連れて行けないんだ。くそ、お前、大丈夫か?」
 ぼうっとしていたことに気が付かれたのだろう、無事な右腕をもって引っ張られ、立ち上がる。こちらを心配する言葉をかけてきたことに、不思議な気分になった。キラを殺した人間に、することじゃないだろうに、と。
「……やっぱり、変な奴だな、お前は。ありがとう、って言うのかな。今よく解らないが……」
 おそらく軍人についていけばいいのだろう。彼女の横を通り過ぎて部屋の外へと向かう。
「ちょっとまて」
 特に別れの言葉などもいらないだろうと、そのまま去ろうとして呼び止められる。彼女へとふりかえれば、すぐに首元に何かをかけられた。
「ハウメアの護り石だ。お前、危なっかしい。護ってもらえ。」
 赤い石が紐でくくられている。ハウメア、という言葉はプラントでは聞かない。風土的なものなのだろう。けれど、それよりも、彼女の言葉に少しあきれた。
「キラを殺したのに?」
「もう、誰にも死んでほしくない」
 涙を浮かべた彼女とその言葉は、戦場においては似つかわしくなくて、それでもきっと、誰もが願っていることだというのは、頭の中では理解していた。心は、ついていかない。



 プラントに向かうシャトルに乗りながら、胸元にしまい込んだ護り石を握った。この石はかつてのアスランに渡されたもので、今の自分が持って行っていいのか悩んでいた。けれど、カガリには悪いけどと、最低限の荷物の他に、これだけはと持ち出した。なにかしら伝言か、メモでもおいておけばよかったけれど、衝動的だったんだろう、結局カガリには何も言わずに出て行ってしまった。恩を仇で返す、とはこういうことか。
 宇宙にあがる振動を、シートに身体を沈めることで逃しながら、窓から見ることのできる宇宙と地球の境界線を眺める。簡単に宇宙に上がれるようになって、地球だけがすべてじゃないと人類が知って。でもやっていることは、宇宙でも地球でも変わらない。結局、人類というのはどこでも変わらないということか。
 プラントのコロニーはいくつかあり、目的はアプリリウス市。プラントの首都であり、プラント最高評議会があるのもここだという。調べたところ、あまりコロニーの大きさに対して実感はわかなかったが、12の市があって、1つの市につき10基あるようでコロニーの数は結構多い。けれど、その内の何基かは戦争で破壊されたという。大きさだけ見れば、1つの国家として数えられていいそうだが、結果としてそれが認められたのは最近だという。深堀すればするほど、血なまぐさい歴史が見えてきて、少し疲弊した。それに、自分が参加していることも含めて。アスラン・ザラという人物は有名だそうだ。プラント最高評議会議長を務めたパトリック・ザラの息子。彼の存在は、いまだザラ派とも呼ばれる過激派に強く残っているという。そんな息子で、最終的に彼と決別をしているのだから、ザラ派からは目の敵にされることも。ただ、親子がまったく同じ思想であるとは限らないのだから、姓だけを見て判断されるのはあまりいい気分ではない。いろいろあったんだろう。父の行いが許せないことが。それよりも大切なものがなんなのか。おそらくそのきっかけでもあったジェネシスに関する記憶が思い出されながら、あの力に関してはたぶん今の自分も賛同しないだろうな、と心の中で笑った。

 アプリリウス市についてから。デバイスを起動して周囲の地図をざっと確認する。今の自分に土地勘はないに等しい。それと、知り合いにあったらごまかせないだろうからあまり公のところにいるわけにもいかない。まずは一直線に、目的地を目指すこととする。途中、花屋を見つけて、花束を4つ。少し多いけれど、レンタカーを借りたから問題はないだろう。車に乗って、そのまま本来の目的地へと赴く。
 目的地は、墓地だ。アプリリウス市にある、集団墓地。多くの墓石がならぶそこは、戦禍で亡くなった者の多くが眠っている。もちろん、ここに収まりきらないどころか、墓石さえ存在しない人も、たくさんいる。目的の人物がどこにいるかは、わからない。けれど、なんとなく歩いていれば、おそらく過去にも来たことがあるのだろう。身体が覚えていてくれて自然と目的の人物のところへとたどりつくことができた。
__Nicol Amarfi__Rusty Mackenzie__Miguel Ayman__
 それぞれの彼らの墓へと、花束をひとつづつ。そうしてから、そっと敬礼の姿勢をとった。



「アスラーン。もうちょっと手加減してくれって」
「手加減したら怒るのはイザークだろ」
 プラントの士官学校を卒業し、成績上位10名にあたえらえる赤服をきてクルーゼ隊に配属されてすぐ。個々の戦闘能力を見るからとシミュレーション上においてそれぞれを敵に想定しての総当たり戦が行われた。互いの癖や隙を見つけてお互いを高めようという思惑があるのだろうが、それがうまくいったのは数戦のみで、基本的に個人戦で暴れることが多い面々は力押しで突破することが多かった。特に終了後に上官のミゲルから怒られたのはイザークとの一騎打ち。お互い、学校で癖というのは嫌というほど知っている。だからもちろんそこを狙うし、狙われるのはわかっている。闇雲に戦ったことで平行線になることはわかるので、わざと狙わせて隙を作ってサーベルを突きつけた。それが相手のイザークには気に障ったようで、同室であるディアッカから苦情が飛んできた。
 ミゲルにも言われたが、結果的にうまくいっただけで、それが致命的になることもある。シミュレーション上だからいいものの、本当の戦場で使うのは良くないと。諸刃の剣なのはわかっているし、結果としてイザークはそれに乗った。それが、見ず知らずの相手なら通用しないということも解っているから、使う予定はないけれど。たぶんイザークは同じところで、別の意味で怒っているんだろう。
「はー、部屋変えてもらおうかなぁ。お前と戦った後荒れるんだよ」
「そんなの、学校にいたときからだろう。こっちだって付き合わされてる」
「それに、手加減しても、しなくても、イザークは怒りますからね」
 ちょうど自室にいたところにきたディアッカ。同室であるニコルもまた、その場にいたために話に入ってくる。
「ちなみに、イザークはどうしたんですか?」
「ラスティに任せてきた」
「可哀そうに」
 どさっと勝手に簡易ベッドに座りこむディアッカに対して一度視線を向けてから、再度机へと向き直る。
「んで、アスランはなにしてんの?」
「オーブについて調べてるんだって。ほら、今度ヘリオポリスに行くでしょ」
「あー、中立国の、ね」
「中立宣言しておきながら、地球連合軍に対しての武力提供……。ずいぶんと無謀というか、プラントをなめているのか、と思って」
「なんも考えてない、とか」
「まあ、過程はどうあれ、僕たちの初の大規模任務ですから。失敗は許されません」
「それはそう」

2024/2/13

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