ガンダムSEED/DESTINY/FREEDOM

アニメ・スぺエディ・リマスターごっちゃごちゃ。DESTINYはTHEEDGE基準
アスラン成り代わり。特殊設定・構成につき注意。名前変換はありません。
成り代わり要素はちょっと濃くなりました。

 シンたちがその場についたとき、1人の男が1つの墓標の前に膝をついて手を合わせていた。それがオーブ式の祈りだと気が付いたのは、その場ではシンだけだった。男は、アスランはシンたちから見て後ろを向いているのでその表情はわからない。けれど、合わせられた手が強く握られていることは、身体の緊張から見て取れた。
 いつからアスランはそうしていたのだろうか。変装すらもしていない、普段通りの姿によくバレなかったなとシンは関心していた。
 イザークはアスランの心情を知ってか知らぬか、ずかずかと彼に近づいていった。ディアッカは頬をかいて、けれどそれを止めずに見ていた。イザークがアスランの側にきても、アスランは気が付いていないのか目を瞑っている。そこまで死者に、そして神に何を祈るのか。そんな個々の心情にまで突っ込むようなことは、今のイザークはしない。けれど、最近見もしなかったアスランの表情は、イザークの心情を逆なでした。
「……いつまでそうしているつもりだ」
 イザークの言葉で、アスランは隣に誰かがいることに気がついたらしい。はっと顔を上げて、イザークを見上げた。イザークは墓石に、アスランの母に手を合わせてからアスランを見た。
「それで? いつまでそうしているんだと聞いている」



「貴様ら! どういうつもりかわかっているのか!!」
 第一次連合・プラント大戦の終戦後、カナーバ議員ら臨時評議会によって停戦条約の準備が進められている頃。アークエンジェルにいた俺達はプラントに戻った。捕虜としてアークエンジェルにいたディアッカはともかく、ジャスティスを持ち出して離反し、最終的にジェネシスを破壊した俺は、たぶん極刑は免れないだろうな、と思いつつもプラントへと足を踏み入れた。出迎えたのは、イザークだった。出会って早々怒鳴り散らす彼に変わらないな、と思いつつ両手を上げた。
「……貴様」
「その扱いが正しいだろう。自身の行った責任はとる」
 イザークの後方にいる兵士たち。前方に立つ彼らは銃を構えている。三隻同盟はザフトと地球軍を相手取った、ザフトからしてみれば敵対組織だ。これのおかげでどちらの被害も最悪を免れたとはいえ、それは変わらない。ザフト軍で、三隻同盟に参加していたのは俺とディアッカのみだ。クライン派が協力していたとはいえ非公式、かつ前に立っていたラクス・クラインはプラントのコーディネーターであってもザフト軍ではない。プラントからはともかく、ザフト軍からしてみれば反逆者であることに違いはない。せめて、捕虜として捕まった結果そうなったディアッカはどうにかなってほしいけれど、とは思うけれど。
 抵抗なく、両手を後ろで縛られる。ディアッカも抵抗はしない。判決が出るのは停戦条約ができてからだろうか、と思いつつ、先導する兵士へとついていく。その間、イザークとは目を合わせられなかった。

 イザークは民間シャトルへの攻撃、ディアッカはザフト軍からの離反、俺はディアッカと同じ罪に加えて機密情報漏洩について軍法会議にかけられることとなった。けれどそのすべてが、その後議長となったデュランダルの言葉で不問とされた。
 __大人の始めた戦争で辛い経験をした若い軍人たち。彼らを罪人として討ってしまってはいったい誰がプラントの未来を担うというのです。私は彼らにこそ平和な明日を託したい!
 カナーバ議長の、超法規的措置も後押ししたのだろう。結果として、俺達も含めて多くの同胞が無罪放免となった。けれど、だからといって個人の心情が変わるわけではない。特に俺に関しては、ジェネシスを討ったパトリック・ザラの息子。彼を批難する声も、表向きにはないけれど賞賛する声も、耳に届いた。その声が大きくなることを危惧したカナーバ議長は、俺をプラントの外へと出した。三隻同盟の伝手で、非公式でオーブへと入った。それを知っているのは、カガリと、オーブで隠居することにきめたキラとラクス。そして彼らの信頼に足りる人たち。最終的に、カナーバ議長からデュランダル議長への議長交代が起こってから、プラントへと戻った。その時にはイザークは本来の役職である文官議員に戻っており、それも俺が戻ってくる状況を後押ししてくれたらしい。最初はザフト軍への復帰も検討していたが、統合設計局への技術者としての配属になった。試運転をするパイロットも兼任してはいるが。
そんな生活を始めて、大体1年。突然ディアッカを引き連れてやってきたイザークを部屋で出迎えながら、どうしたのかと首を傾げた。とりあえずあるものを、と思って2人にコーヒーを出しながら、作業中の端末の画面を落とす。一応機密情報なので。
「どうしたんだ?」
 来て早々に不機嫌そうなイザークは放っておいて、とりあえずディアッカに聞いた。ディアッカは振られることも解っていただろう、イザークを1度みてから口を開いた。
「いやあ、ちょっとしたお誘いに?」
「誘い?」
「そんなの1つでしょ」
 なあ、イザーク? とディアッカはイザークを見た。イザークは一つ舌打ちをして、アスランを見た。
「ザフトに復帰することにした」
「え」
 イザークの心境がどう変わったかは知らない。議員として活動しているなかで何かを知ったのか、それとも別の理由があるのか。元々ザフトは義勇軍だ。議員をやりながら、は難しいけれど、別職と同時に入軍することは珍しくない。
「……そうか」
「貴様はどうする」
 がんばれよ、と言おうとしたところでイザークがかぶせてくる。どういう意味か、と再度首を傾げた。
「いつまでそうしているつもりだ」
 イザークの表情は変わらない。不機嫌に、ただ怒鳴らないのはこの1年での成長だろう。
「貴様は、何のためにプラントに戻ってきた」
 2人へのついでにとカップにいれたコーヒーを口に入れながら思考する。死刑判決される可能性が高い状況なのも解っているなかで、プラントに、ザフトに戻ってきた理由。自身の責任を取ると決めたのも本当。なんとなくで彼女の隣には立てないと思ったのも本当。故郷であるプラントに帰りたかったのも本当。ではそのあとは、と聞かれたら正直答えはなかった。だから、軍人にならなかったらこうしているだろうな、という考えのもとに技術者になった。当時の状況でパイロットとして復帰したところで、特務隊に所属していた俺が戻ったら面倒なことになると思ったのも事実だが。だから、いつまで、と言われてもわからない、としか返せないし、それをイザークは求めていない。
「……俺に、パイロットになれと?」
 設計局にいる時点で俺はザフト軍所属だ。ただイザークがいたときとは働いている場所が違うだけ。前線から引いて、後方へと回った。それに対して納得していないということはそういうことだろう。そう思って顔を上げれば、ぐっと襟元を掴まれた。
「それほどの力をただ無駄にするつもりか!?」
「技術者としての力では不足だと?」
「それ以上に使えることに何故尽力しない!?」
 あーあ、と言ったのはディアッカだ。けれどその声すらもかき消えるほどに声は大きくなる。
「前線だけがすべてじゃない!」
「そうやって見て見ぬふりをするつもりか!」
「していない!」
「しているだろう! プラントや死んでいった仲間たちのためにできることしろと俺は言っている!」
 そこまで言って、ディアッカが間に入り込んだ。襟元から手を離されて、俺はそっと皺を伸ばした。どうどう、とディアッカはイザークを抑え込んだ。
「そういう話じゃないだろ」
「……停戦後、パイロットの人員は常に不足している。破壊されたコロニーの撤収作業もそうだが……ザフト脱走兵の不審な動向もある」
「……」
「地球軍もそうだ。先の停戦条約による平和は、まだほど遠い」
 イザークはきっと、議員としていろいろ見てきたのだろう。結局、戦争はまだ終わっていないのだと。
「それは、貴様も知っているだろう」
 開発にて、新しいモビルスーツの製造が始まれば想像くらいはつく。条約に規定された、ニュートロンジャマーキャンセラーの搭載禁止やミラージュコロイドの軍的使用の禁止。どれも制定されていながらも、“表向きは守られている”だけのはなし。地球軍も、プラントも、裏では何をしているかわかっていないし、互いに信用もしていないだろう。設計局でも、その2つを使用前提としている兵器の案は平然と出てくるのだ。
「ジュール隊が復帰する。貴様もこい」
「は……?」
 まるで決定事項であるかのように言ったイザーク、隣でうんうんとうなずくディアッカ。2人はそれがどういう意味か分かって言っているのだろうか。
「俺をパイロットとして復帰させることがどういうことかわかっているのか!?」
 パトリック・ザラの息子。その肩書はどうあがいても覆らない。ましてや、無罪放免となったとはいえ、機密情報を持ち出したパイロットでもある。特攻隊の肩書も消えていない。そんな、めんどくさい人間を引き入れれば、どうなるか分かったものじゃない。それくらい、隊長を務めていたイザークならわからないわけではないだろうに。
「しらん! いいか! さっさと異動届を出してこい!」
 イザークはそういうと音を立てて立ち上がって部屋から出ていった。ぽかん、とそれを見送る。クスクスと笑っているのはディアッカだ。
「心配してるんだよ、あいつも」
「心配って」
「そりゃ、アスランが技術部志願だったのは知ってる。イザークも本命は議員だっただろう。でもさ、あの時の戦争で“それじゃダメだって思った”から、俺もアスランたちもザフトに志願した。正解かなんてわかんねぇけど、イザークは議員に戻っておんなじように思ったんじゃねぇかな。アスランは?」
「おれは」
「俺もジュール隊に入る。個人的には、アスランが来てくれたら助かる。あ、でも前見たいに常に喧嘩されるのは困るけど」
「……喧嘩じゃない。あいつが突っかかってくるだけだ」
 そのあと、ディアッカもまた部屋を出ていった。端末を再度開いて、作業途中だった画面を見ながら、これからどうするか、と思考する。今の仕事が嫌いなわけではない。誰からの命令かは知らないが、裏が平和とは程遠いことは嫌というほど理解した。それに歯がゆさを感じたことも事実だ。だからどうしたらいいのか、などわからないのだ。当時は、モビルスーツという力があった。考えを共にする仲間がいた。__今は?
 遠く離れた異国にいるカガリも、オーブの代表として今の世界をどう思っているのだろう。離れていても、想いは同じだと、信じてはいる。服の中に隠した石を布越しに握りしめて、はあ、と1つため息をついた。



「……イザーク」
 声をかけられて振り向けば、銀色の髪を風になびかせて1人の男がいた。赤服を着ていた写真にも写っていた人物だ。名前が出てきたのは、ほとんど無意識だった。
「その面はなんだ」
「なんで、ここに」
 立ち上がりながらそう言えば、イザークはぐっと俺の襟元を掴んだ。
「貴様が居なくなるからだろうが! 俺達はむちゃくちゃ忙しいというのに、なぜコンパスの尻拭いをせねばならない!」
「落ち着けってイザーク」
 噛みついてくるイザークを諫めようとするのは、おそらく後方で見ていたディアッカだ。その後ろにも1人の青年がいる。ふー、と息を吐きながらもイザークの表情は険しいままだ。襟元を直しながら、じゃあ来なければよかったのに、なんてつぶやけば聞こえたらしいイザークの手が伸びてくる。さっとそれをよけながら、1歩後方へ引いた。
「貴様ぁ!」
「あーもう、アスランもそう挑発するなって」
「……なんで2人が? いつコンパスに?」
 俺がそう言ったところで、2人は動きを止めた。ふと、何かを思い出したかのように。少し無言の時間があって、口を開いたのはディアッカだった。
「アスラン、どこまで覚えてるんだ?」
 それを聞いて、こちらもやっと2人が俺の状況を知っていることを理解した。いい大人を探しにきたのも、それが理由なのだろう。2人がきた理由は、わからないけれど、昔馴染みだから、という事だろうか。でも2人がオーブにいたような気はしないのだが。
「どこまで、って」
「俺らのことはわかる?」
「……イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン。今は、今も? ザフトのジュール隊にいる、んだろう」
 自信はなかったが、思い出した記憶から情報を引っ張ってみれば、それが合っていたのだろう。わかってるじゃん、とディアッカが言った。
「じゃあ、こいつは?」
 2人の後方にいた青年へと視線を向けられた。彼の赤い瞳と視線が合った。知識としてはわかる。けれど、思い出している記憶の中に、そういえば彼の、彼らのことはいまだなかった。
「……シン・アスカ」
 驚いた表情を見せた彼に対して、俺は彼から目を反らした。彼に聞こえているか、聞こえていないかくらいの声量で、その先をつぶやく。コーディネーターの聴力であれば問題なく聞こえるくらいだったと気がついたのは口にしてからだ。
「すまない、それ以上はわからない」

 俺が乗ってきた車は、別手配で返却しておくと言われて、3人が乗ってきた車へと押し込まれた。ディアッカの運転で、助手席はイザーク。必然的に、隣にはシンがいる。窓枠に膝をついて、景色を眺める。この状態で、シンの方向を向くのは憚られた。シンも同じように外を見ていて、互いが互いを避けている状況が出来上がっていた。ミラー越しにディアッカが苦笑しているのが分かるし、イザークはこちらへ視線を向けもしない。言い方が悪かったな、とは思うけれどあれ以上は言いようがなかった。シンとの思い出は、今の俺にはなかったから。
「とりあえず、一度シャトルでボルテールに戻る。そのあとコンパスと合流する。シン・アスカ、今宇宙に出ているのはミレニアムの方か?」
「あ、はい。アークエンジェルは地球にいるんで」
「その情報はいらん。迂闊に自軍の情報を言うな」
「……すみません」
 イザークとシンの会話を聞きながら、俺はそっと目を閉じた。

 シンは、盗み見るように隣を見て驚きの声を上げた。あのアスランが寝ている、と。ミネルバで一緒だったシンが覚えているアスランは、基本的にこうして無防備な姿を見せたことはない。もちろん休息時間だったら別だが、それでも戦艦にいる影響か、自室以外では基本的に気を張り詰めていた。だからこんなうたたねなんて、とシンは目を見開く。
「寝かしておけ」
 イザークが興味なさそうにそう言った。顔は前を向いていたが、視線だけが後ろを、アスランを見ていた。
「呼吸器離脱から2週間、ギプスが外れて1週間。一般人であれば療養期間は終わっていない」
「え、なに。そんなに重症だったわけ? アスランが?」
「爆撃を防御なく直撃だそうだ」
「うへぇ」
 幸運? それとも悪運が強いのか? とディアッカは軽口をたたく。シンはイザークの言葉に驚いていた。重症だったのは聞いていたが、そこまでの怪我なんて、ミネルバでセイバーを落とされた時でもしてないし、ザフト脱走の時も重症ではあったけれどモビルスーツに乗って目の前に現れた。後々聞けば重症だったらしいけれど、あくまで外傷だけで無茶するから傷がなかなか治らなかったと言っていたのは一緒にいたメイリンだ。そんなアスランが死ぬ寸前なほどの重症を負うなんて、と思うと同時に動けるようになって早々に宇宙に上がってきたことに驚いた。以外と簡単に地球と宇宙の行き来はできるけれど、その衝撃がそこそこ強いことは、何度も行ったり来たりしているシンにはよくわかる。
「どうせここに来るまでもやらかしているだろう」
「あー、オーブの警備掻い潜って他国に渡ってシャトルだもんなぁ。療養場所がどこかはしらねぇけど、十二分に護衛対象だったろうに」
 警備してた新兵かわいそーとディアッカは笑った。勝手に新兵にされているが、実際はどうだろうか。もしアスランを見張って逃亡を阻止しろ、なんて言われても、シンは出来る気がしないなと思った。



 __ねぇ母上、父上はまた仕事なの?
 __ええ。でも言ったでしょう? 父上は世界のためのお仕事をしているって。あなたたたちが幸せに暮らしていけるように、こことは違う場所で一生懸命がんばっているの。わかってあげてね、アスラン…

 __父上! 父上見てください! ザフトの赤服です。 これからは私もプラントの平和のために父上のお手伝いを…… 父上?
 __私の邪魔をするなアスラン
 __父上……?

2024/2/16

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