空の軌跡編

6


「や、やらかしおった!!!」
「いやぁ……まじか」
「……大盛況なだけ、よかったでしょうか」
学園祭。生徒会役員は設備や来賓者の対応をしながらも学園祭の運営に奮闘した。仕事をさぼって学園祭を楽しむ生徒会長どのを時々捕まえながらだったこともあり、正直疲弊もしていた。それでもやることはやらなければならず、生徒会主催の演劇も、前段階から役者などを集めて準備に取り掛かった。私は舞台には出ず、裏方で照明や音響を担当していたので、セリフの暗記はしなくてよかったが、それでもタイミングなどを考えたりあわせたりするのは正直きつかった。そうして何度も練習を重ねた本番。来賓者の中には各地方の市長やOBなども招かれているので失敗は許されないのだが、それでも生徒会長はやらかしてくれた。ラストシーンにて乱入し、それはもう盛大に壊してくれた。心の中で大混乱する役者たちがうまく組み込んでくれたためにとりあえずは問題なく済んだが、裏方も大混乱だし、本来だったら生徒会長に照明は当たらないが、喋ってくださっているのでアドリブで照明を当て、それをフォローするためにしゃべる役者に照明を当て、となにがなんだかわからなくなっていたのが本音だ。クローゼさんが言った通り大盛況で終わったので、なんとかなったのだが、さすが生徒会長。やることがえげつない。無事に学園祭が終わったのちに、1年生で集まってはいたが困憊で机に倒れこんでいた。
「でも、 のフォローさすがだったわ。レオ先輩もほめてたし」
「ああ。乱入場面でライト当てたのはすごかった。俺だったら無理だわ」
「なにがなんだか、よくわからなかったですけどね。役者の先輩たちのおかげもあってうまくいきました」
「それでも、楽しい学園祭でしたね」
ルーシー先輩たちにとっては最後の、私たちにとっては最初の学園祭。ある意味、波乱万丈だった。これがいい思い出で終わるか、悪い思い出で終わるかは、正直未来にならないとわからないか。
「それは確かに」
「はああ。あの生徒会長、一発やらないと気が済まないわ……」
「せ、先輩を殴るのはちょっと……」



「少年、ちょっといいか?」
「……なんでしょう。」
翌日。学園祭のあとということもあり、今日は授業もなかった。何か所かでは学園祭の後始末に追われており、生徒会もそうだが全員ではなく、時間ごとに分けて動いていた。そんな中で、作業をしていないといけないはずの先輩の姿が廃校舎にあった。廃校舎で休憩していた私が言うのもなんだが、なんでこんなところにきたのだろうか。作業しろ、といったところですることはないので、そういった小言はもう言わない。
「なに、ちょっとした誘いだ」
「誘い?」
「ここを卒業してすぐに領地を継ぎはしないだろ?」
「ええ、まあ」
「その間、多少時間は空くわけだ。」
「……そう、ですね」
領地は継がなくても、家のことはやることになるので時間が空くわけではないが、学生の頃よりは融通が利くだろう。
「まあべつに、卒業すぐじゃなくてもいいんだが。なんとなく、お前さんはしばらく勉学に励んでそうだし。」
「はあ」
「手が空いてたらでいい。俺のところこないか?」
「……は?」
「といっても、まだ正スタッフじゃないけど。おっさんも断らないだろうし」
「なんのことを言っているのか……」
「いつかわかるって。じゃあな」
正直、先輩の言っていることはあまり理解できないが、卒業後の進路のことだろうか。あんなちゃらんぽらんなのに、進路先どうするんだろうと思わなくはなかったが、すでに就職が決まっているのか、意外だ。
踵を返し、手を振りながら去ろうとする先輩を眺めながら、とりあえず、いつもの言葉は伝えておく。
「……耳にタコだとは思いますが、仕事してくださいね、レクター先輩」
それに対しても先輩は手を振るだけでそのまま本館のほうへと姿を消した。

___それが、ジェニスでみた先輩の最後になった。

2021/1/18
メインストーリでの1年目はここまで。

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