クールな君へ5のお題

3.斜に構えたその横顔

「……もう」
夜10時ごろ。なぜか私と刹那は2人で1つのカンテラをもって夜道を歩いていた。これをパパに言えばおそらく心配されて文字通り飛んできてしまうだろう。なぜこうなったのだろうと、私は前方を歩いている刹那を見ながらそっと溜息をつく。

そもそも始まりは中学生の最後から2番目の行事、修学旅行で肝試しが催しとして組み込まれたことだ。少人数の反対があったが、肝試しとしては頻繁に用いられている場所であるため安全性があるということ(これのどこが安全なのかはわからない)、教員が全員で危険がないように見回りをするという、教員の協力が得られたこともあり、実施することとなった。といってもほかのクラスは女子の反対意見が強すぎたために、実施するのは私のいるクラスだけとなった。この時点でなぜ中止しなかったのかと聞きたいが、それはわからない。
そうして当日になり、2人1組になって進むこととなりくじ引きを開催。確立は低かったはずだが、私は刹那とあたることとなった。

「ちょっと、刹那!待ってってば」
どんどん先に進む刹那の腕を無理やりつかむと、刹那の肩が思いっきり上がった。おそらく本当にびっくりしたのだろう。カンテラを落としそうになりながら、背後を振り向いた。
「……未来」
「刹那が先行くからでしょ?」
「いや、それはあのことが……なんでもない」
じっと刹那をにらみつければ、刹那はそっと目線をそらした。
「誰が見てるかわからないんだぞ。」
「お化け役は一切作ってないはずだから平気よ。それともなに、怖いの?」
「お化けなんてデビルで見慣れてるだろ」
「そうね。ふふ、ここでデュラハンやミイラがでたら大騒ぎかしら。」
「やまんばとかな」
私たちの頭に浮かぶのは、魔界で一度は仲魔にしたデビルたちだ。実際遭遇したら大変だと思うが、すでに1度見ていることに加え、それがデビルであると知っているためかそこまで恐怖を感じていない。
「ほら、さっさと行くぞ」
今度はしっかりと振り向いて。カンテラを持つ手とは逆の手を差し伸べられる。きょとんとして思わず動きを止めた。
その私の様子に刹那もまたきょとんとした。お互いが同じ表情をして、今度は2人同時に吹いた。
「ふふ、仕方ないわね。きちんとエスコートしてよ?」
「はいはい。どうぞ妹様」
刹那の手に自分の手を乗せて。手をつなぎながら1つの明かりを頼りに歩いていく。

のちのち、このことがばれて恋人なのではないかと騒ぎになったのはまた別の話。

2015/05/04

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