知らぬ空へと羽ばたく鷹

12

多くの人であふれかえっている校門を通り抜け、きょろきょろと辺りを見回しながら校舎へと足を進める。見覚えのあるようでない人たちがたくさんいて、そんでもって中学からの知り合いは誰もいなかった。やっぱり地方が違うと知り合いはいないか、と思いながらも掲示板をのぞき込んだ。クラス分けの紙が大きく何種類かに分かれて掲示されている。順々に見ていこうかとも思ったが、何気なく昔と同じクラスの表を眺めた。・・・どうやらここまでは同じらしい。自分の名前が書かれたところからさらに下にいけば、かのキセキである緑間の名前があった。思わず笑みがこぼれた。
校内の廊下を歩いて居れば、前方に見えるは見覚えのある緑色。身長が高いこともあって目立つ目立つ。何人かは彼の姿を見て驚いている様子。まあ確かに緑髪の高身長のやつなんてほとんどいないし。

「よう!緑間真太郎クン!」
「・・・」

声をかけることで俺に気がついたらしい緑間は振り向くと眉を寄せた。そんないやな顔をしなくても。とは思ったが口にはださない。

「俺、高尾和成ってんだ。バスケ部はいるんだろ?よろしくな!」
「・・・知っているのだよ。今更名乗るな」
「えー?自己紹介は大切だぜ?」

けらけらと笑うと、あきれたようなため息が聞こえた。それに対して言い返しながらも教室へと足を運ぶ。どうやら今日のラッキーアイテムはセロハンテープらしい。なんかそれ、どこかでも見た気がするのは気のせいか。

「そういえば、先輩たちには会った?」
「ああ。会話はしていないが会ったのだよ。」
「相変わらずだよねぇ。俺、一度練習に参加したんだけど宮地さんってば相変わらずの性格でさー!あ、でも一応初対面だったから少し優しかったかな?真ちゃんどうだった?」
「ただ練習に参加してミニゲームをしただけだったのだよ。数時間しか居なかったからな」
「ありゃ。そうなんだ。てっきり長時間やってるのかと思ってた。学校近いでしょ?」
「おまえよりはな」
「そりゃそうだ」

緑間が自席に座ったので、まだ見ぬ緑間の前の子に断っていすを借りる。来たら返せばいいかなーなんて。ああ、あのときは席替えで前後になっていつもこんな感じで話をしていた。

「高尾」
「んー?」
「入学式が終わったら体育館に行くのだよ」
「・・・もちろん」



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(緑間がまさかの新入生代表だったということ以外は)とくに何事もなく、入学式は終わった。親しくなったクラスメイトに別れを告げ、緑間とともに教室を出た。校舎からは少し離れていた体育館からは、声とバッシュのこすれる音がきこえている。大抵、入学生に在校生が参加しない場合は登校禁止になっていたりするのだが、バスケ部は部活を行っているらしかった。ふと俺たちが入っても平気なのかと考えたが、緑間がどんどん進んでいくので取り敢えずついて行く。開きっぱなしの扉から体育館へと入ると、体力作りの為かシャトルランを行っていた。そういえば入学早々のシャトルランは死ぬかと思ったなぁなんて。

「高尾」
「へいへーい」

よそ見していたのを言われて視線を緑間の方へと、そしてその先にいる先輩・・・大坪さんへと向ける。大坪さんは俺たちに気がついたのかこちらへと近づいてきた。

「すまないな、まだ監督が戻ってきていないんだ」
「そうですか。・・・見学は可能ですか?」
「ああ、大丈夫だ。それに2人は部員になるんだろう?」
「はい」

基本監督がいるベンチの方へと向かい、腰掛ける。強豪校故か部員は結構な人数を誇っており、体育館はひどい熱気に覆われている。少しすれば自分たちもここで練習ができるのだと思うとぞくぞくする。じっと見ていると、宮地さんと木村さんが走っているのが見えた。汗だくで走っていて、たぶんだがこちらには全く気がついていないだろう。後で挨拶にでも行った方がいいだろうか。

「高尾」
「んー?」
「今年は勝つのだよ。誠凛にも、洛山にも。」
「あったりまえでしょー!あいつらだけにいい思いさせねぇーよ」

すでに出会っているのであろう黒子と火神がいる誠凛。去年のIH、WCと優勝を果たしている無冠の5将3名がいて、あの赤司が加入した洛山。他、IHのブロックでは桐皇とも当たる可能性はあるし、霧崎第一も東京だ。本選に進めば他のキセキの世代が行った学校とも当たる。強敵であることには違いない。ま、たとえ誰が居ようがなんだろうが、負ける気はさらさらないけれど。

「今度こそ、5人で優勝する」
「ああ。そのためには高尾、さっさとレギュラーをとるのだよ」
「人事を尽くすのだよ」
「まねをするな!」

2013.4.26


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