東京鬼祓師パロ

03 藤に屑

「お互いだましだまされ、ってな」
「鶯殿の演技力には参りました」
「楽しかったぞ」

ひらひらと、白い人形が手の上で踊る。それはまるで自我を持っているかのよう。
あのあと、花札から解放された鶯殿は、札憑きと呼ばれる者になった。本来、花札に取り憑かれた場合、戦った隠人のような存在になってしまう。しかしそれをある程度押さえ、さらに白札によって引きはがされたことで、徒人ではなく、札憑きとなった。札憑きは、取り憑いた花札や、他の花札の力がある一定使用できるようになる。無論、花札の主である執行者と呼ばれる存在よりは弱くなるが。
そして、鶴丸殿はその白札。花札の番人であり、守り手でもある。聞けば、執行者と呼ばれる存在を決める役割もあるようだ。対となるものに鬼札と呼ばれるものがあり、こちらが本来、花札を悪しきものから守る役目を持つらしい。しかし、花札がちりぢりになったと同じように、鬼札とも離れてしまったため、現在行方の知れている花札の守り手も行うようにしているらしい。
そして執行者。花札の持ち主となり、花札を集め、その力を使う者。白札に選ばれた私は、その執行者となり、ちりぢりになった花札を集めることになる。仕事とも関係しているため、そこは特にあまり考えていない。
最後に。
あの秋の洞での出来事は、お互いがお互いを利用した結果の出来事であった。唯一の誤算は、鶯殿が花札に憑かれたことだけ。
私と鶯殿は、国立国会図書館収集部特務課の仕事として鶴丸殿を利用し、花札の在処を求めた。そして鶴丸殿と鶯殿は人形の幽霊の噂を作り出し、執行者になりうる者を探していた。あのとき声をかけてきたのは、いつも1人で過ごしている鶯殿が珍しく話していた私に、なにかあると思ってのことだったらしい。つまり、鶯殿は全てを知っていた訳だ。鶴丸殿が花札であること。私が国立国会図書館収集部特務課の人間であること。そして、”お互いがお互いを探していた”ことを。

「素質があって、かつ日本OXASの関係者が近くに来てくれた。これは正直運が巡ってきてるな」
「こちらもまさか、花札の番人と会えるなんて。ですが、なぜOXASの関係者を求めて?」
「・・・・・・そうだなぁ。隠し事は一切しない方が、お互いいいのかもしれない。だがいいのかい?本当に戻れなくなるぞ」
「私は構いませんが」

そう答えれば、鶴丸殿は少し驚いた表情を見せた。しかし、すぐに表情を変え、考える仕草を見せる。

「・・・・・・。それなら、君が光札を手に入れることができたら、話そう。カミフダの歴史を。」
「光札、ですか」
「松に鶴、桜に幕、芒に月、柳に雨、桐に鳳凰・・・・・・だったか?」
「そう。あそこは秋の洞。柳に雨がいるだろうよ。気配もするしな」

そう言いながら、鶴丸殿はおもむろに鞄を探ると、小さいケースを取り出し、ばらまいた。それには様々な絵が描かれており、トランプのようなカードだった。

「これが花札。ちなみに一般的なものな。100均で買ってきた」
「トランプはよくご家庭にありますが、花札は見ませんね」
「このご時世、トランプが主流だからなぁ。学生だとなおさら。っと。まずこれが柳に雨、だ。」

そういって出されたのは、傘を差した人が描かれた札だ。おそらく簡略化されているのだろうが、特徴はしっかりと見られる。

「それで、鶯に取り憑いたのは紅葉に青短。」
「ああ、でもカミフダはきれいに描かれていたな」
「そりゃあな。カミフダは1つ1つに意思がある。たとえ番人でも、その思いは操作できない。カミフダを造った者の想いが宿るからな。鶯に彼が取り憑いたのも、なにかしらの思惑があるんだろうさ。」

そういいながらも、柳に雨を持ったまま、視線は上がらない。

「あくまで光札は、だ。おそらく他の札もどこかに紛れている。それを探しながら洞を進まないといけないだろうよ。花札の数は48枚。まぁ花札は強い力に惹かれる。完全にばらばらになっている訳ではないだろう。」
「結構な枚数だな。それに加えて鬼札、だったか。鶴丸の対も探さないといけないのだろう?」
「・・・・・・そうだな。寝過ぎて、正直気配も全然覚えていない。みればわかるだろうが、俺と同じように人の姿をしている可能性もあるからな。向こうもこっちのことはわからないだろうし、花札優先でいい。」
「そうですか。なら優先的に洞を探しましょう。もし他の人に憑いてしまったら大変ですから」
「そうだな。・・・・・・さて、そろそろ教室に戻るとしよう。昼休みも終わる。」
「そうですね。さすがに4月に屋上は長時間いるような場所じゃないです」
「風邪引いたら元も子もないからな。チャイムが鳴る前に戻るとしよう」

・・・・・・そう。これは私たちが花札を集める物語。OXASの人間として、執行者として、謎深きカミフダを集める物語。しかし、それが簡単なものであるとは、誰1人思っていない。世の中、そんな上手くいくわけがないのだ。
物語は始まったばかり。主人公なのか、魔王なのか、道化師なのか。それは追々わかること。今はただ、まっすぐ前を見て進むだけ。

たとえ結末が、バッドエンドだとしても。

2017/10/26

(補足)
日本OXAS=国立国会図書館収集部特務課
呪言花札=カミフダ(≠花札)
柳に雨・・・花札で言うと柳に小野道風のこと。
光札・・・松に鶴、桜に幕、芒に月、柳に雨(柳に小野道風)、桐に鳳凰

原作プレイ者はわかると思いますが、一般的な(wiki系で見ることが多い)名称と、当作品での名称が違うものも多くあります。消去方でどの札かはわかるとは思いますが、原作に忠実に行こうと思います。よくわかんないって人はどうぞ原作を楽しんでください。



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